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カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の疑いと診断への対応【急激に悪化した敗血症で,動物接触歴がある場合に疑う。菌分離ではMALDI-TOF MSが有用。抗菌薬投与により治療】

No.4898 (2018年03月10日発行) P.55

井上 智 (国立感染症研究所獣医科学部第二室室長)

鈴木道雄 (国立感染症研究所獣医科学部主任研究官)

登録日: 2018-03-09

最終更新日: 2018-03-06

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  • カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の原因菌はイヌ・ネコの口腔内に常在しており,発症すると急激な敗血症に至り,致死率30%で年々症例数が増えていると聞きます。本感染症の疫学・診断・治療の現状から医療の現場でどのように疑って対処するとよいのか,また,具体的なリスクと医療関係者への啓発の要点について,国立感染症研究所・鈴木道雄先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    井上 智 国立感染症研究所獣医科学部第二室室長



    【回答】

    カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は,イヌやネコによる咬・搔傷に伴って感染する動物由来感染症です。研究レベルの調査で,わが国では2015年末までに68例(うち死亡17例)が把握されています。その8割以上が敗血症に至った重症例で,患者の9割超を40歳代以上の中高年齢者が占めています。1996年のデンマークの疫学報告1)では,患者数は人口100万人当たり0.5人,致死率31%ですが,2016年のフィンランドの報告2)では同4.1人,5%です。いずれのデータをもとに推計しても,わが国における本感染症による死亡数は年間20数人程度となりますが,患者数は大きく異なっています。今後,わが国でも軽症例が多く把握されるようになると,患者数が増え,致死率は下がる傾向になりそうです。

    本感染症の特徴として,小さな傷口からの感染例が多く,創部局所にはあまり炎症を起こさないまま数日の潜伏期の後に全身症状を呈します。来院時には傷がほとんど治っていることもあり,問診等による動物接触歴の把握が重要です。急激に悪化した敗血症で,動物接触歴がある場合,本感染症が疑われます。激しい腹痛を伴う場合もあります。これまでの国内症例の多くが救急搬送され,ICUでの治療を受けています。

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