肥大型心筋症:著明な心筋肥大により心室内腔が狭小化し,拡張障害をきたす疾患である。肥大型心筋症は若年者の心臓突然死の最も重要な原因であり,特に運動中の突然死をきたすため,検診でのスクリーニングが重要である
拡張型心筋症:心筋収縮不全により心拡大をきたし,心不全が進行する予後不良の疾患である。小児期では,いずれの年齢にも認められ,5年生存率は50%と不良である
拘束型心筋症:心室の拡張や肥大はなく心筋の収縮力も正常であるが,心室のコンプライアンスが低く,拡張不全になっている心筋症である。小児期では稀であるが,予後は著しく不良であり,発症2年で50%が死亡する
心筋緻密化障害:心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とし,遺伝的要素の強い心筋症である。学童期~思春期に心電図検診で無症状のうちに発見されることもある。臨床症候は拡張型心筋症の病態を呈するもの,塞栓症,致死的な不整脈を合併する場合がある
不整脈原性右室心筋症:主として右室心筋,時に両心室にみられる進行性の変性,脂肪浸潤,線維化を特徴とし,右室の拡大や収縮不全,右室起源の心室性不整脈を呈する進行性の疾患である。若年者の突然死の原因として重要で,初発症状のこともある
2006年に米国心臓協会(American Heart Association:AHA)が提唱した心筋症の定義とは,「通常,不適切な心室の肥大や拡大を呈するような心筋の器質的あるいは電気的異常を有する多様な疾患群」であり,「その原因は多岐にわたるが,しばしば遺伝性」である。そして主な病変が心臓にあるものを原発性心筋症,全身疾患の心筋病変を二次性心筋症と大別している。
2008年に欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)は,心筋症とは「心筋に構造的,機能的異常をきたす心筋障害であり,この障害を説明できるような冠動脈疾患,高血圧,弁膜疾患,先天性心疾患を有さないもの」と定義しており,形態・機能的異常をもとにした分類となっている。