先天性心疾患の多くは,幼児期までに診断されるようになったが,学童期以降に学校検診をきっかけに発見される先天性心疾患もある
複雑な先天性心疾患の多くは,術後例も含めて,専門機関で管理されることが多く,術後の状態に応じた生活管理が必要である
診断,管理区分の決定後は,医療機関,家庭のみならず,学校も含めて連携して情報を共有し,適切な管理を行える体制にすることが重要である
近年,先天性心疾患の診断・治療成績は目覚ましく向上しており,従来は成人期に到達しえなかった疾患でも,成人を迎えられるようになってきている。学校心臓検診はそうした中で,未診断の心疾患の検出,術前あるいは術後症例などの生活・運動管理などにおいて重要な役割を占めている。本項では,非専門医でも遭遇しうる,学校検診で新たに診断されうる先天性心疾患の診断のポイントを中心に述べる。
一般的に,乳幼児期までに心雑音,心不全症状,チアノーゼなどを呈する先天性心疾患は学童期前に診断されていることが多い。しかし,いくつかの疾患は,これらの症状を呈することなく学童期に到達する場合があり,そうした疾患の診断では,学校心臓検診は重要である。また,軽症の心室中隔欠損症などで,通院を自己中断している場合もあるため,検診での問診などからこうした患児の抽出を行い,適切な学校管理につなげる必要がある。
学校検診で発見されることがある代表的な疾患としては心房中隔欠損症がある。診断されない場合,主として成人期に心不全,不整脈,肺高血圧症を呈するようになるが,乳幼児期にこうした症状を呈するのは稀である。また,肺血流量の増加に伴い,胸骨左縁第2肋間に収縮期雑音を認める場合があるが,全例がこうした心雑音を呈するわけではないため,学童期まで未診断の症例が比較的みられる。ほかにもⅡ音の固定性分裂,胸骨左縁第4肋間の拡張期ランブルも重要な聴診所見である。
学校心臓検診の心電図所見としては,不完全右脚ブロック,V4誘導でのT波の陰転などで精密検査となることが多い。特に小児の胸部誘導においては,右側は陰性T波を呈することが正常で,年齢が上になるにしたがって,左側胸部誘導から順に陽転化していく。しかしながら,心房中隔欠損症においては,図1のように,V4誘導でのT波は,それよりも右側のV3誘導が陽性T波であるにもかかわらず,陰性化している特徴的な「孤立性陰性T波」を呈する場合があるので1),こうした症例は不完全右脚ブロックを呈していなくても,心エコー検査で心房中隔欠損症の有無を検索するとよい。ほかに,これらの所見に右軸偏位やⅠ度房室ブロックが所見として伴うこともある。