2017年2月に発行された『日本版敗血症診療ガイドライン2016』では「敗血症,敗血症性ショックにおける抗菌薬治療で,プロカルシトニン(PCT)値を指標に抗菌薬の中止を行わないことを弱く推奨する」と記載されていたが,同年9月に「敗血症において,PCTを利用した抗菌薬の中止を行うことを弱く推奨する(2B)」と訂正された1)。これは,16年に発表された1575人のICU患者を対象とした無作為化比較試験でPCTを指標に抗菌薬を中止した群のほうが抗菌薬の投与期間が有意に短く,死亡率も有意に低かったことを受けたものである2)。
12カ国26個の臨床試験から6708人の患者データを得て行われた「患者レベルのメタアナリシス」においても,急性呼吸器感染症においてPCTを指標に抗菌薬を中止したほうが抗菌薬の投与期間が短く,死亡率も低かったことが報告されている3)。現時点では,「呼吸器感染症や敗血症患者でPCTを指標に抗菌薬を中止する」ことの有用性に関するデータが集まっている。
一方で「PCTが高かったら抗菌薬を開始する」といった開始や変更に関する有用性を示した質の高い臨床研究はほとんどない。PCTは様々な有用性が期待されるバイオマーカーではあるが,その臨床的意義や有用性を理解して使用するべきである。
【文献】
1) 西田 修, 他:日本版敗血症診療ガイドライン2016. 真興交易医書出版部, 2017.
2) de Jong E, et al:Lancet Infect Dis. 2016;16(7): 819-27.
3) Schuetz P, et al:Lancet Infect Dis. 2018;18(1): 95-107.
【解説】
笠原 敬 奈良県立医科大学感染症センター准教授