進行胆囊癌は,壁深達度により治療成績が明確に層別化される。全国胆道癌登録による胆囊癌切除例は,2015年までで1万7923例であった。T1すなわち,固有筋層までであれば,5年生存率は90%以上であるのに対し,T2すなわち,漿膜下層に浸潤を認めるものでは63.7%,T3aは27%,T3bは18.8%,T4では10%未満ときわめて予後不良となる1)。
T2胆囊癌は進行がんの中で唯一根治性が期待できる。このT2胆囊癌の術式として,予防的系統的肝切除術は胆囊静脈の支配領域である肝S4a,S5を胆囊床ごと切離する術式である。一方,胆囊床切除術は胆囊床を含め約2cm肝実質を切除する術式である。予防的胆管切除術を行うか否かも数十年前から討議されてきた課題であるが,いまだ不明瞭である。胆管切除の目的は,胆囊管にまでがん浸潤を認めた場合や,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を確実に行う場合である。どの術式もR0手術(がん遺残のない手術)を行うことが重要である。
全国胆道癌登録からT2胆囊癌につき術式別に検討を行った結果,S4a+5切除術と胆囊床切除術に有意な差は認めなかった2)。現在,日本胆道学会の指導のもと,胆囊癌術前の前向き多施設共同研究が行われている。
【文献】
1) Ishihara S, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2016;23(3):149-57.
2) Horiguchi A, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2013;20(5):518-24.
【解説】
堀口明彦*1,浅野之夫*2,守瀬善一*3 *1藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科教授 *2同講師 *3藤田保健衛生大学総合消化器外科教授