腋窩リンパ節郭清は,リンパ浮腫や上肢の運動,神経障害を一定の頻度で生じ,患者のQOLに影響を及ぼす。
センチネルリンパ節生検(SNB)は,1997年頃からわが国でも臨床応用が検討されはじめ,安全性や長期成績のエビデンスも蓄積され,今や乳癌手術における腫瘍縮小化の標準的手法として確固たる地位を築いた。これまで,迅速診断でセンチネルリンパ節(SN)転移陰性であれば腋窩郭清を省略し,転移陽性であれば追加郭清とする,とされてきたが,ACOSOG Z0011やAMAROS試験の結果から,SNにマクロ転移を認めた場合でも,適切な症例選択を行い,術後薬物療法ならびに放射線治療を行えば,腋窩郭清の省略が局所再発や予後に与える影響は少ないと考えられるようになってきている。SNBに関するACOSOG Z0011試験の10年経過観察結果が報告され,局所コントロール,生存期間とも腋窩郭清群とSNB群での差は認められていない。SN転移の診断は迅速病理診断で行い,腋窩リンパ節郭清の適応を決めていたが,SN転移の扱いに変化が認められ,転移陽性でも,腋窩リンパ節への放射線照射を前提に郭清の省略も行われるようになった1)~4)。
【文献】
1) Giuliano AE, et al:JAMA. 2011;305(6):569-75.
2) Donker M, et al:Lancet Oncol. 2014;15(12): 1303-10.
3) 日本乳癌学会, 編:科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1 治療編 2015年版. 第3版. 金原出版, 2015, p13, 79, 98.
4) 日本乳癌学会, 編:乳腺腫瘍学. 第2版. 金原出版, 2016, p200.
【解説】
佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター乳腺腫瘍科教授