ヒト血清アルブミン(HSA)は肝細胞で合成されるため,肝予備能の評価に広く用いられている。低アルブミン血症は浮腫や胸・腹水の原因となり,特発性細菌性腹膜炎や肝腎症候群の誘因となる。アルブミン補充治療の意義は,有効循環血漿量の増加,腎血流維持といったHSAのvolume expanderとしての機能に基づくと考えられる。一方,肝硬変患者への経口分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)投与は,HSA値の上昇に加えて肝発癌を抑制する1)。
HSAは585個のアミノ酸からなる単純蛋白質で,分子内に17対のジスルフィド結合を有し,N端から34番目のシステイン残基(Cys34)が唯一遊離チオール(SH)基を有している。Cys34のSH基が遊離した状態の還元型,他の物質と結合した酸化型にわけられる。酸化型HSA比は,肝疾患を含む種々の疾患で上昇する。
HSAは血漿膠質浸透圧の維持能に加え,内因性・外因性物質との結合能や酸化還元緩衝能を有し,Cys34の構造がこれらの機能と関連する。HSAは肝疾患の進行に伴って低下し酸化型比が上昇するが,それは機能性の還元型HSAの低下に起因し,結合能や抗酸化能も低下する2)。薬物との結合能は薬効と関連し,抗酸化能の低下は肝癌発生とも関連する。経口BCAAの投与は,還元型HSAの上昇と機能改善をもたらし,肝硬変の総合的な病態改善に寄与することが期待される2)。
【文献】
1) Muto Y, et al:Hepatol Res. 2006;35(3):204-14.
2) Setoyama H, et al:J Gastroenterol. 2017;52(6): 754-65.
【解説】
田中基彦*1,佐々木 裕*2 *1熊本大学消化器内科准教授 *2同教授