□Wolff,Parkinson,Whiteの3人は,PR間隔の短縮と脚ブロック型の心電図を呈し頻拍発作を繰り返す患者群を報告し,この疾患を3人の頭文字からWPW症候群と名づけた。
□生下時より房室弁輪部に電気的短絡路となる心筋束(副伝導路)が残存し,副伝導路を介した伝導により心室が早期に興奮する。
□全人口の0.3%程度にみられ,副伝導路を不整脈回路に含む様々な頻拍発作を引き起こす。
□基本的に予後良好であるが,WPW症候群患者のうち0.1%~0.15%/年の例が心房細動の合併により心室細動から突然死を起こす。
□基本的に無症状である。頻拍発作時には動悸を自覚する。動悸は開始と終了を自覚できることが多い。
□頻拍レートが速いと,めまいや失神を引き起こし,長時間持続すると,胸痛や嘔吐などを呈する場合がある。
□心電図は①デルタ波,②PR間隔の短縮,③脚ブロック(QRS幅延長),を特徴とする。デルタ波は,QRS波の前のスラーで心室の早期興奮を表す(図1)。デルタ波を常時認めるものを顕性WPW症候群,一過性に認めるものを間欠性WPW症候群と呼ぶ。
□副伝導路には,心房→心室伝導(順行性),心室→心房伝導(逆行性),両方向性伝導を示すものがある。逆行性伝導しか認めないものは潜在性WPW症候群と呼ばれ,デルタ波は認めないが順方向性房室回帰性頻拍の原因となる。
□副伝導路の部位により,デルタ波の極性やQRS波形が異なり,逆に心電図波形から副伝導路の局在診断がある程度可能である。
□順方向性房室回帰性頻拍:心房心室間で,房室結節を順行性に,副伝導路を逆行性に旋回するリエントリー頻拍である(図2)。頻拍レートが速く(150~220拍/分),幅の狭いQRS波が規則正しく出現する。副伝導路を介した室房伝導と心房興奮により,QRS波の直後に逆行性P波を確認できることがある(short RP' tachycardia)。
□逆方向性房室回帰性頻拍:副伝導路を順行性に,房室結節を逆行性に旋回するリエントリー頻拍である。幅広いQRS波が規則正しくみられる。心室頻拍との鑑別が必要である(図2)。
□心房細動の合併:心房での不規則な高頻度興奮が副伝導路を介して心室に伝わるためRR間隔が不規則で,心室頻拍様の幅広いQRS波を認める(図2)。偽性心室頻拍と呼ばれることがあるが,この用語は誤りである。
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