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たこつぼ症候群[私の治療]

No.5264 (2025年03月15日発行) P.44

木田圭亮 (聖マリアンナ医科大学薬理学准教授)

登録日: 2025-03-13

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  • 左室の一部が一過性に無収縮となる症候群で,1990年にわが国から初めて報告され,左室が「たこ壺」のような形状を呈することから,「たこつぼ型心筋症」と呼ばれた。80%以上の症例で心尖部を中心とした領域が無収縮となるが,冠状動脈の支配領域では説明がつかず,冠動脈造影検査では,無収縮の原因となる冠動脈病変は認められない。高齢女性に多く,ストレスを契機とするなど特徴的な臨床経過を示すが,その病態はいまだ解明されておらず,確立した治療法・ガイドラインは存在しない。予後は必ずしも良好とは言えず,再発も稀ではない。

    ▶診断のポイント

    心因的または身体的ストレスを契機に胸痛,胸部違和感などの胸部症状を認め,心電図でもST上昇を伴うことが多いため,ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)との鑑別が重要である。冠危険因子の確認に加えて,発症前のストレスの有無も重要である。心電図では,aVr誘導でのST低下と,V1誘導でのST上昇がない,という2条件を満たすと,感度91%,特異度96%で,STEMIとたこつぼ症候群の鑑別ができる1)。典型的な例では,心エコーで左室心基部の過剰収縮と冠動脈の支配からでは説明できない心尖部の無収縮を認め,左室内心尖部に血栓ができることがある。International Expert Consensus Document on Takotsubo Syndromeに,診断や治療のアルゴリズムが提示されている2)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    冠動脈検査でたこつぼ症候群と診断されるまで,原則,STEMIに準じた初期治療を行う。基本的に心室収縮異常や検査所見は,数週間~数カ月で徐々に回復するので,それまでの治療は対症療法と合併症の管理である。自然軽快するのを心エコー図検査,血液検査,心電図などでモニタリングし,フォローする。心室内血栓の報告もあり,心尖部の無収縮が明らかな場合は,抗凝固療法を検討する。また,心基部の過剰収縮で圧較差を生じる症例では,強心薬や利尿薬により圧較差がさらに増大する可能性があるため,使用は慎重にすることが望ましく,脱水があれば補正を考慮する。

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