読者の皆さま,こんにちは。前回に引き続き,背側部誘導(posterior leads)を扱います。これは通常の胸部誘導(V1~V6)の延長で,その名の通り“せなか”側に電極を貼って記録する誘導でしたね。
【前編】のハイライト―電極をつける位置は覚えていますか? ポイントは,V4〜V6と同じ高さを意識して,V7:後腋窩線,V8:肩甲骨下角,V9:脊柱傍線が正しいポジションでしたよね。もちろん接頭語は「左側」です。実際に背側部誘導をつけてみた様子をご覧下さい(図1)。これは“V4→V7,V5→V8,V6→V9”方式で電極をつけています。腋窩線や肩甲骨,脊柱などのメルクマールとの位置関係が明確に示されていると思います。
ボクも臨床経験が浅かったとき,なかなか1人でV7~V9を正しく記録することができませんでした。でも,今では忘れなくなりました。練習あるのみ!
背側部誘導は,別名“後壁誘導”とも呼ばれることがありましたね。心臓の“バック”を意味するこの“後壁”は,心筋梗塞の診断において“死角”になりやすいのでした。背側部誘導は,この領域を映し出す“バックミラー”として開発された経緯があるんです。
一方で,この“後壁”という名称には注意が必要でした。他の画像診断の分野では最近,この領域は側壁ないし下壁の一部と見なされることが多く,inferolateral/posterolateral/inferobasalなどの表現が“乱立”しています。
ただ,心電図の世界では古い名称が残っており,いまだに“後壁梗塞”といった表現が普通に登場します。