非ST上昇型心筋梗塞(non ST segment elevation myocardial infarction:NSTEMI)は,冠動脈粥腫(プラーク)の破綻やびらん,そして石灰化結節に伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄する場合や,経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)後の再狭窄,安定狭心症患者に合併する貧血など,心筋酸素消費の需要と供給バランスの破綻などをきたす病態である。不安定狭心症との鑑別は,心筋トロポニンなどの心筋障害のバイオマーカーの上昇の有無で行う。治療のポイントは,臨床像,心電図変化,心筋バイオマーカー(心筋トロポニン推奨)に基づいたリスク層別化(下記)によって侵襲的治療戦略をとる適切な時期を見きわめることである。
病歴の聴取が最も重要である。胸痛の出現時刻・部位・性状・持続時間・誘因(安静時か労作時か,閾値の有無)などを手際よく聴取する。
新規発症の胸部症状を訴えた場合,胸痛が来院時に消失し心電図変化や心筋トロポニンの上昇も認めない場合でも経過観察することが重要である。
侵襲的治療戦略(冠動脈カテーテル検査+血行再建術)は以下のリスク層別化によって行う。
薬物治療抵抗性の胸痛持続または再発,心不全合併,血行動態不安定,致死性不整脈または心停止,機械的合併症(急性僧帽弁逆流など),一過性のST上昇,反復性の動的ST-T変化。
心筋梗塞に合致する心筋トロポニン値の上昇および下降,新たな心電図変化(動的ST-T変化),GRACEリスクスコア>140(「MD+CALC」のサイト1)内でGRACEリスクスコアの算出・評価が可能)。
糖尿病,腎機能障害(糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2),低心機能(左室駆出率<40%),早期の梗塞後狭心症,冠血行再建の既往(PCI,冠動脈バイパス術),GRACEリスクスコア 109~140。
上記の危険因子を有さず保存的治療が妥当と考えられる場合,GRACEリスクスコア<109。
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