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僧帽弁逸脱症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-14
米田正始 (医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー)
太田剛弘 (高の原中央病院循環器科部長)
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  • ■疾患メモ

    僧帽弁複合体は弁尖,腱索,乳頭筋,左室と関連した複雑な構造を有している。

    僧帽弁逸脱症(mitral valve prolapse:MVP)は何らかの原因で僧帽弁を支える腱索または僧帽弁尖自体が異常をきたし,僧帽弁の接合不全が生じる状態を指すが,弁逆流を合併すると病的対処を必要とする。

    広義には心エコー長軸像で僧帽弁前尖(anterior mitral leaflet:AML)と大動脈弁無冠尖(non coronary cusp:NCC)の接合部から僧帽弁後尖(posterior mitral leaflet:PML)基部を結ぶライン(Gilbert線)から左房側に凸の状態をMVPとしたが,現在はAMLの可動部(aortic curtain)からPML基部を結ぶライン(吉川ら)を基準とする()。

    04_25_僧帽弁逸脱症

    弁自体の粘液腫など変性と腱索などが伸長した例と断裂を伴う例がある。狭義には一次腱索などの断裂で,該当する弁尖が部分的に「逸脱」することで2葉の弁が十分な接合面積を持ってかみ合わなくなる病態を指す。

    逸脱の程度が進行すると弁が収縮期に閉鎖できなくなり,弁逆流(僧帽弁閉鎖不全症)を合併する。

    同じ逸脱でも,閉鎖不全症がごく軽度の場合と高度逆流のある場合では予後も治療法も異なるため,ここではわけて解説する。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈弁逆流の少ない僧帽弁逸脱症(僧帽弁逸脱症候群)〉

    無症状なことが多いが,臨床的には非定型的な胸痛や息切れ,動悸,疲労感などそのほかの交感神経刺激症状が認められる例を帽弁逸脱"症候群"とする場合がある。

    〈弁逆流を合併した僧帽弁逸脱症〉

    弁逆流による弁尖と心臓への負担の度合いによって異なるが,弁逆流が高度になり,心負荷が増すと労作時の息切れや動悸などが発生する。

    【検査所見】

    〈弁逆流の少ない僧帽弁逸脱症〉

    聴診で収縮中期クリックを聴取する。

    心エコーにて僧帽弁尖の逸脱が認められれば確定診断となる。

    〈弁逆流を合併した僧帽弁逸脱症〉

    聴診にて収縮中期クリックに続く雑音が心尖部や腋窩部に聴取し,胸部X線写真で心拡大や肺うっ血があれば僧帽弁閉鎖不全症を疑う。

    心エコーで僧帽弁逸脱と逆流を認めれば確定診断となる。心不全が進行すれば左室が拡大し初期には過収縮,進行すると駆出率が低下し,血液検査にてBNPが高値となる。

    左房負荷により心房細動を合併しやすく心電図で確認できるが,初期には発作性心房細動が多くホルター心電図などが有用なこともある。

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