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心房中隔欠損症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-15
赤木禎治 (岡山大学病院循環器疾患集中治療部准教授/成人先天性心疾患センター副センター長)
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  • ■疾患メモ

    心エコー検査の発達により,成人期になって診断される心房中隔欠損症は増加しており,右心系の拡大した患者では本症を念頭に置く必要がある。

    加齢とともに心房細動,房室弁逆流,肺高血圧の頻度が増加し,比較的小さな欠損症でも奇異性脳塞栓を起こす危険性がある。

    多くの心房中隔欠損症はカテーテル治療可能であり,日常運動能の改善と長期予後の改善が期待される。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    □心房中隔欠損症は成人の先天性心疾患で最も多くみられる疾患であり,40歳以上の先天性心疾患の約35~40%を占める。本症は幼小児期に自覚症状を伴うことは少なく,また心雑音を主とする臨床所見にも乏しいことが多く中高年になって初めて診断される場合がある。

    □カテーテル治療が可能となった現在,60~70歳になって初めて発見される心房中隔欠損症がしばしば経験されるようになってきた。

    □診断の契機は,動悸・息切れといった症状を訴える受診が最も多い。さらに不整脈,脳梗塞,心不全を発症して診断されるなど,心雑音や学校検診などで診断される小児期の心房中隔欠損症とは発見状況が大きく異なっている

    □40歳以降には心房細動や心房粗動を合併する頻度が増し,それによって心不全が増強する1)

    【検査所見】

    〈経胸壁エコー検査〉

    経胸壁心エコー図で診断する場合,多断面でスキャンすることが重要である。必要に応じて心窩部アプローチや右胸壁アプローチを用いることで,より正確な診断が可能である。心房中隔欠損症に合併する心内構造異常として左上肺静脈遺残と部分肺静脈環流異常(特に右上肺静脈)に注意が必要である。いずれもCTにより比較的容易に診断が可能である。

    〈経食道心エコー検査〉

    多くの心房中隔欠損症がカテーテル治療可能となった現在,経食道心エコー図による欠損孔の形態評価は非常に重要である。中でも欠損孔の最大径の計測と周囲縁の評価が重要である。

    大動脈周囲縁は治療の可否に関係しないが,上大静脈や左心房上縁が欠損する症例,下大静脈縁が欠損する症例,房室弁周囲縁の欠損する症例はカテーテルによる閉鎖栓の留置は難しく,手術の適応となる。三次元画像はカテーテル治療にきわめて有用である。

    〈カテーテル検査〉

    カテーテル検査における肺体血流比の評価はサンプリング部位や時相によって変化する場合があるが,わずかな数値の違いで治療適応を変更する必要はない。

    日本循環器学会のガイドラインでも成人の心房中隔欠損症は肺体血流比1.5以上という血行動態評価にこだわることなく,右心系負荷が認められる場合,もしくは右心系負荷が明らかではなくても心房性不整脈や脳梗塞の原因として考えられる場合には,治療の適応と考えられるとされた。

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