□食道裂孔ヘルニア (hiatal hernia)は,横隔膜の食道裂孔を通して胃の一部が縦隔内に入り込む病態である。
□脱出の形態により,①滑脱型(食道胃接合部が横隔膜上に逸脱),②傍食道型(食道胃接合部は横隔膜下にとどまり胃のみが縦隔内へ逸脱),③混合型(滑脱型と傍食道型の混在),の3つに分類される(図1)。
□成因には肥満,妊娠,慢性的な咳嗽,亀背などによる腹圧上昇と食道裂孔の開大などが関与している。
□食道裂孔ヘルニアには多くの場合,胃食道逆流症(GERD)を伴うため,胸焼けや呑酸が認められる。慢性咳嗽,咽喉頭異常感などの食道外症状を呈することもある。
□大型食道裂孔ヘルニアでは食道裂孔貫通部胃粘膜に潰瘍(Cameron潰瘍)が生じ,消化管出血や貧血を呈することがある1)。
□X線造影,内視鏡,食道内圧測定に基づき,総合的に診断する。
□X線造影:横隔膜上に脱出したヘルニア嚢が認められる。滑脱型では,His角が鈍化し,臥位でバリウムの食道内逆流が認められる。
□内視鏡:食道側からヘルニア嚢が確認できる(図2幕内分類2)のdefinite hiatal hernia)。傍食道型や混合型の診断には,胃内反転観察で胃の脱出を確認する必要がある。逆流性食道炎やバレット食道の有無を観察することを忘れてはならない。
□食道内圧測定:high resolution manometry(HRM)は下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)と横隔膜脚(crural diaphragm:CD)を同定でき,正常ではLESとCDは一致する。食道裂孔ヘルニアではLESとCDが分離,その距離によってtypeⅠ(LESとCDが一致),typeⅡ(LES-CD間距離<1~2cm),typeⅢ(LES-CD間距離>2cm)の3つに分類されている(シカゴ分類3))。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより