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急性胃炎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-12
山本康英 (大阪府済生会吹田病院消化器内科)
一瀬雅夫 (帝京大学医学部附属新宿クリニック)
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  • ■疾患メモ

    急性胃炎(acute gastritis)とは,外因性あるいは内因性要因により,急激に胃粘膜に炎症が惹起された状態であり,炎症の経過によって慢性胃炎とは区別される。

    突発する上腹部症状(上腹部痛,悪心・嘔吐,吐血・下血)を伴い,内視鏡検査で胃粘膜に高度の発赤や浮腫,びらん,潰瘍,出血など多彩な変化が観察される病変は,急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)と呼ばれる。急性びらん性胃炎,急性胃潰瘍,出血性胃炎,およびこれらが混在する病態である。

    一般に男性に多いと言われている。

    原因の約16~64%が薬剤であり,そのうち非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によるものが約40~60%を占める。その他,ストレス,感染,食事,医原性などが主な成因である(表1)。

    05_14_急性胃炎

    薬物治療が効果的であり,予後は比較的良好で1~2週間で治癒することが多い。

    急性胃炎は,外因性あるいは内因性要因により惹起された胃粘膜の急性炎症性疾患であり,AGMLと総称されている。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    突発する上腹部症状(上腹部痛,悪心・嘔吐,吐血・下血)で発症する。

    出血量が多い場合は,頻脈や血圧低下などのショック症状を呈することがある。

    【検査所見】

    基礎疾患の有無,ストレスの有無,薬剤(NSAIDsなど)内服歴,食事内容,検査・治療歴(内視鏡検査や放射線照射治療)などについて十分な問診を行い,誘因を明らかにすることが重要である。

    身体診察:貧血の程度,腹部の状態などを診察する。

    腹部の触診:心窩部に圧痛や抵抗を認めることがある。また,重症例では反跳痛・筋性防御のような腹膜刺激症状を呈することがある。

    末梢血液検査・血液生化学検査・動脈血ガス分析:貧血,出血傾向の有無を確認する。下血が疑われる場合には,観便を行い性状を確認する。

    腹部単純X線:消化管穿孔の有無の確認や腸閉塞などの疾患の鑑別を行う。

    上部消化管内視鏡:全身状態が安定していれば,できるだけ早期に行う。

    内視鏡検査所見として,胃粘膜に広範囲あるいは多発性に高度の発赤や浮腫,びらん,浅い潰瘍,出血など多彩な変化が観察される。出血部は赤色や黒色を呈する(表21)。食道や十二指腸にも病変を合併することがあるため,注意深い観察が必要である。アニサキス症では,白色の虫体を認める。

    05_14_急性胃炎

    病理組織:胃粘膜に好中球を中心とした炎症細胞浸潤,浮腫,出血,充血,変性上皮細胞などが認められる。

    腹部超音波:胃粘膜の浮腫が強い場合に胃壁肥厚が観察されることがあり,他疾患の鑑別にも有用である。

    鑑別疾患として,急激な腹痛では急性胆管炎,胆嚢炎,急性膵炎,吐下血では消化性潰瘍や胃・食道静脈瘤,胃癌,マロリー・ワイス症候群などが考えられる。

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