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機能性ディスペプシア(FD)

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  • ■治療の考え方

    患者が満足する症状の改善を第一の治療目標とする。

    上部消化管内視鏡検査でHelicobacter pylori感染が疑われる場合には,感染の有無を確認する。

    ディスペプシア症状は日々変化することもあるため,4週間程度は処方を継続して効果を判定する。

    効果が得られない場合に漫然と同一薬剤を投与するのではなく,その他種々の治療法を考慮する。

    ■治療上の一般的注意&禁忌

    【注意】

    器質的疾患の除外を常に念頭に置いて治療を行う。

    必ずしも単一薬剤での治療で効果が得られるとは限らないため,消化管運動機能改善薬と酸分泌抑制薬の変更,あるいは併用を考慮する。

    【禁忌】

    器質的疾患の除外を行わずに漫然と治療を行わないようにする。

    ■典型的治療(

    ガイドラインによる診断と治療のフローチャートをに示した。


    05_16_機能性ディスペプシアFD

    【H. pylori感染時】

    H. pylori感染がディスペプシア症状の原因であると考えられる場合には,H. pylori除菌治療を考慮する。ただし,FDにおけるH. pylori除菌の必要治療数(number needed to treat:NNT)は13とされているため,患者に過度の期待を与えないようにする。

    〈一次除菌治療〉

    一手目:タケキャブ20mg錠(ボノプラザン)1回1錠 1日2回(朝・夕食後),サワシリン250mg錠(アモキシシリン)1回3錠 1日2回(朝・夕食後),クラリス200mg錠(クラリスロマイシン)1回1錠 1日2回(朝・夕食後)併用(7日間)

    〈二次除菌治療〉

    一手目:タケキャブ20mg錠(ボノプラザン)1回1錠 1日2回(朝・夕食後),サワシリン250mg錠(アモキシシリン)1回3錠 1日2回(朝・夕食後),フラジール250mg錠(メトロニダゾール)1回1錠 1日2回(朝・夕食後)併用(7日間)

    【H. pylori感染なし/除菌治療が有効でない】

    優位な症状を聴取しながら薬物治療を行う。ただし,FDに対してはPDS症状に対するアコファイドのみが保険適用となる。

    〈初期治療〉

    消化管運動機能改善薬は以下のように処方する。

    一手目:アコファイド100mg錠(アコチアミド)1回1錠 1日3回(毎食前),またはガスモチン5mg錠(モサプリド)1回1錠 1日3回(毎食前)(保険適用外)

    酸分泌抑制薬としてプロトンポンプ阻害薬(ネキシウム,タケプロン,パリエット),H2受容体拮抗薬(ガスター,アシノン,アルタット,ザンタック)を処方する。

    一手目:ネキシウム20mgカプセル(エソメプラゾール)1回1カプセル 1日1回(朝食後),またはタケプロンOD30mg錠(ランソプラゾール)1回1錠 1日1回(朝食後),またはパリエット10mg錠(ラベプラゾール)1回1錠 1日1回(朝食後),またはガスター20mg錠(ファモチジン)1回1錠 1日2回(朝・夕食後),またはアシノン150mg錠(ニザチジン)1回1錠 1日2回(朝・夕食後),またはアルタット75mgカプセル(ロキサチジン)1回1カプセル 1日2回(朝・夕食後),またはザンタック150mg(ラニチジン)錠1回1錠 1日2回(朝・夕食後)(いずれも保険適用外)

    〈二次治療〉

    漢方薬(六君子湯)や抗不安薬(セディール)を用いる。

    一手目:六君子湯(りっくんしとう)2.5g 1回1包 1日3回(食間),またはセディール10mg錠(タンドスピロン)1回1錠 1日3回(いずれも保険適用外)

    ■偶発症・合併症への対応

    併存する疾患として,胃食道逆流症(GERD)や過敏性腸症候群(IBS),慢性便秘などが挙げられる。

    常に患者の訴えを引き出すように質問票などを用いながら症状を聞く。

    ■非典型例への対応

    ①器質的疾患の除外ができない場合,②初期治療および二次治療に抵抗性である場合には,専門医への紹介を考慮する。

    ■高齢者への対応

    年齢によって治療方針を変更する必要はない。

    ただし,高齢者は肝機能,腎機能等の生理機能が低下していることがあるため投薬の継続には注意する。

    ■ケアおよび在宅でのポイント

    基本的には外来での加療が可能である疾患である。

    患者・医師の良好な関係を構築する。

    ■文献・参考資料

    【参考】

    ▶ 日本消化器病学会, 編:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014 -機能性ディスペプシア(FD),南江堂, 2014.


    【執筆者】大島忠之(兵庫医科大学内科学消化管科准教授)

    【執筆者】三輪洋人(兵庫医科大学内科学消化管科主任教授)

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