□消化管穿孔は,種々の原因で消化管に孔(perforation)が開き,内容物が腹腔内に漏出し,汎発性腹膜炎を引き起こす重篤な救急疾患である。
□穿孔部位によりTreitz靱帯を境に上部消化管と下部消化管にわけられる。
□ここでは上部消化管穿孔について記載する。上部消化管穿孔の原因疾患としては胃・十二指腸潰瘍が多くを占めるが,そのほかに胃癌,特発性食道破裂,腹部外傷,誤嚥,医原性(内視鏡検査,治療)などがある。
□近年,胃・十二指腸潰瘍についてはH2受容体拮抗薬(H2RA),プロトンポンプ阻害薬(PPI),除菌療法の登場により外科的治療は激減したが,胃・十二指腸潰瘍による穿孔の発生そのものは減少しておらず注意が必要である1)。特にNSAIDs内服により潰瘍合併症(出血,穿孔)のリスクは増大する2)。
□一般的に,食道穿孔では嘔吐後の突然胸痛を認める。
□胃・十二指腸の穿孔では胃液,胆汁などの消化液が腹腔内へ流出するため,突然の上腹部痛を主訴に来院し,腹膜刺激徴候を伴うことが多い。
□腹部所見:腹膜刺激徴候,腸雑音低下を認める。
□胸部・腹部X線:立位で横隔膜下にfree airを認める。立位が困難な際には左側臥位(decubitus位)で肝表面のfree airを確認する。X線でのfree airの診断精度は70~80%であり,病歴や症状,腹部所見から消化管穿孔が疑わしい場合にはCT診断が必要である。
□腹部CT:上部消化管穿孔でのfree airの検出率は90%以上であり,少量のfree airや腹水の検出も可能である3)。また,穿孔部位や原因の特定,膿瘍や腹膜炎の合併の評価も可能であり,治療方針決定のために有用である。
□腹部超音波:腹水の検出に有用である。
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