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感染性腸炎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-13
細江直樹 (慶應義塾大学医学部内視鏡センター)
金井隆典 (慶應義塾大学医学部消化器内科教授)
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  • ■疾患メモ

    感染性腸炎(infectious enterocolitis)は,細菌またはウイルスなどの感染性病原体による腸管感染症の総称である。

    わが国での感染性腸炎の原因の80%以上はウイルス性(ロタウイルス,ノロウイルス,アデノウイルス,アストロウイルスなど)であり,細菌性ではサルモネラ,カンピロバクター,赤痢菌,病原性大腸菌,Clostridium difficileなどである。原虫は稀であるが,クリプトスポリジウム,ジアルジア,サイクロスポラ,赤痢アメーバなどがある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    下痢,腹痛,発熱,嘔気,嘔吐が認められる。大腸に炎症を起こすものでは,血便が認められることもある。

    脱水が高度な場合,皮膚の乾燥,ツルゴールの低下,頻脈,起立性低血圧などが認められる。

    腸チフス,パラチフスなど特殊な細菌の場合には,比較的徐脈,バラ疹,脾腫が認められる。

    【検査所見】

    食事摂取歴,腹痛,便の性状などの詳細な病歴聴取は重要である。

    ウイルス性腸炎では便培養はもちろん陰性であり,炎症反応(血清CRP値)の高値,脱水による血清ヘモグロビン値,BUNの上昇などが認められる。ノロウイルスに対しては便検体のイムノクロマト法迅速診断キットがあるが,保険適用は3歳未満または65歳以上,臓器移植・悪性腫瘍,抗癌剤や免疫抑制薬服用患者のみである。

    便中白血球がみられた場合は細菌性腸炎が疑われ,便培養を行うかどうかを検討する。便培養検査は,どのタイミングで,どのような患者に行うべきかといったコンセンサスはないが,血便や発熱など症状の強い患者,海外渡航歴のある患者,小児・高齢者,免疫不全者,重篤な併存疾患のある患者,症状の重症化や重複感染が疑われる炎症性腸疾患患者には行うべきである。

    赤痢アメーバを疑う場合には,新鮮な粘血便を保温し,なるべく早く鏡検して虫体を直接観察する。病理検体を出す場合も,PAS染色などの追加染色が必要なため,赤痢アメーバを疑う所見があることを病理医へ伝えることが重要である。

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