腸管虚血は急激に進行し,腸管壊死や穿孔に至ると重篤な敗血症を呈し,生命に直結する病態に陥る。高齢者に増加しており,診断の難しさがある。
高齢者の腹痛患者に対し,ためわらずに造影CT検査を追加できるかがポイントとなる。腸管壁の造影効果が弱い部分が,虚血または壊死になっている腸管である。しかしこの読影は難しく,造影CTだけでは診断に苦慮することは稀ではない。自他覚的な症状,身体所見,血液検査,腹部超音波検査などから総合して判断することもある。特に腹膜刺激症状,base excess(BE),腸間膜浮腫は診断に有用とされている1)。腹痛のある患者の場合,血算,生化学検査のほかに静脈血液ガス検査を提出し,アシデミアやBEの負の異常を確認する。血清クレアチニンが上昇している場合は上述の所見以外に,急激な発症か,下血の有無,心房細動の有無,腹部超音波検査での蠕動が消失した拡張腸管の有無2)などの所見も考慮し,積極的に造影CTの実施を選択している。単純CT検査でも,門脈ガス像,腸管壁内気腫,腸管壁濃度の上昇などは,腸管虚血を疑う所見である。手術の判断に迷う場合は,超音波ガイド下に腹水を穿刺し,その性状が血性ないし混濁していれば手術を選択している。
代表的な疾患名として腸閉塞を除き,上腸間膜動脈塞栓症,上腸間膜静脈塞栓症,非閉塞性腸管虚血(NOMI)などがある。結腸のがんや糞便による非特異的な炎症病変を呈する閉塞性大腸炎も,腸管内圧上昇による腸管壁の血流障害をきたし,粘膜の虚血または腸管壁の壊死を生じる3)。高齢者の便秘で重篤な腸管壊死を生じることもあるので,十分に注意したい。
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