□虫垂炎(appendicitis)は,心窩部痛または臍部中心の腹痛から始まり,その後,虫垂のある右下腹部に限局した鋭い痛みとなる。初期に診断することは困難なことが多いが,虫垂炎を念頭に経過観察することが重要である。
□心窩部痛または臍部中心の腹痛から始まり(内臓痛),その後,半日ないし2~3日以内に虫垂のある右下腹部に限局した鋭い痛みとなる(体性痛)。
□悪心や嘔吐,食欲不振,便秘や下痢を伴うこともある。虫垂が後腹膜にある場合には腰痛を,下腹部正中から左下腹部にある場合にはその部位が痛むことがある。
□発熱は37~38℃台であるが,膿瘍形成や穿孔など重症化した場合には39℃台になることもある。
□McBurney点(右上前腸骨棘と臍を結んだ線の外側1/3の点),Lanz点(左右の上前腸骨棘を結ぶ線分を3等分した右1/3の点)の圧痛点を認める。
□腹膜刺激症状として,Blumberg徴候(腹壁を用手的に徐々に圧迫し,急に解除すると疼痛が著明になる)や筋性防御(軽度の触診で反射的に生じる腹壁筋の緊張),heel drop sign(かかとを上げた状態で急に下ろすと疼痛が著明になる)を認める。
□Rovsing徴候(下行結腸に沿って頭側に圧迫を加えると増悪する右下腹部痛)やRosenstein徴候(仰臥位よりも左側臥位で増強する右下腹部痛)も補助的診断として有用である。
□直腸診で直腸の右側に圧痛を認めることもある。
□血液生化学検査:1万~1万5000/μL程度の白血球増加と核の左方移動を認めることが多い。カタル性虫垂炎では比較的軽微な増加の場合もある。CRPの上昇を認めるが,発症早期にはさほどみられない1)。
□腹部単純X線:sentinel loop signや糞石,右腸腰筋縁の不鮮明化などを認めることがある。穿孔性であれば遊離ガス像を認める。
□腹部超音波:簡便で非侵襲的に繰り返し検査が可能であり,急性虫垂炎の診断に有用である。ただし,術者の技量に左右される。虫垂の外径が6mm以上を虫垂の腫大という。蜂窩織炎性虫垂炎は8~10mm程度である2)。周囲がhigh echoicで内腔がlow echoicなリング状で,蠕動がない。虫垂壁の肥厚や虫垂内腔の液体貯留像,糞石に留意する。回盲部腸管壁の肥厚や回盲部周囲の液体貯留,大網の肥厚などの間接所見も描出される。層構造のうち筋層の肥厚や断裂がみられれば,蜂窩織炎性あるいは壊疽性が強く疑われる。
□腹部CT:診断の客観性において,CT検査は超音波検査より優れている。直接的所見としては虫垂の腫大や壁肥厚(図1),糞石(図2)がみられる。間接的所見として回盲部腸管壁の肥厚,虫垂や回盲部周囲の脂肪濃度の上昇,Douglas窩を含めた反応性の液体貯留,回盲部のリンパ節腫大,側腹円錐筋膜の肥厚,膿瘍形成(図2)などが認められる。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより