□急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer)は,重篤な基礎疾患を有す患者,中でも寝たきり状態の高齢者に発症しやすい1)。無痛性の突然の新鮮血便により発症する。潰瘍は下部直腸(Rb)歯状線寄りに好発し,その多くは浅く地図状である。潰瘍内に露出血管を同定できるケースも少なくない(図)。
□潰瘍の原因は,虚血性粘膜傷害であると考えられている。
□多くの症例で血便が唯一の症状である。肉眼的に派手な潰瘍を形成していても,疼痛を訴えることはほとんどない。基礎疾患のため,自覚症状を訴えられない状態にある患者も多い。
□直腸診:血便の患者をみるときの基本的な診察手技である。血便の性状を確認するだけでなく,直腸腫瘍を触知しないことも確認しておく。
□血液検査:貧血の有無を確認する。
□バイタルサイン:直腸潰瘍からの出血の多くは動脈性である。基礎疾患のためにもともとの状態が悪い患者が多く,特に大量の血便を認めた場合には一般的な救急対応時と同様にバイタルサインをモニターする。
□下部消化管内視鏡:診断確定のためには最も有効である。血便の原因は多岐にわたるため,特に初発時は内視鏡観察なしに状況証拠のみで安易に診断を下さないようにする。
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