□小腸腫瘍(tumor of the small intestine)は稀な疾患であり,消化管腫瘍の1~5%を占めると推測されている。特異的な症状・徴候がないために診断に難渋することが多い。近年開発されたバルーン内視鏡やカプセル内視鏡により,従来よりも早い段階で発見されるようになってきている。
□悪性腫瘍としては,癌,悪性リンパ腫,GIST〔消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor)〕,神経内分泌腫瘍など,良性腫瘍としては,腺腫,過誤腫,脂肪腫,リンパ管腫,血管腫などが挙げられる。
□わが国の多施設におけるダブルバルーン内視鏡(DBE)症例の集計では,DBEを行った1035例のうち小腸腫瘍を認めたのは144例であり,悪性リンパ腫21.5%,GIST18.8%,ポイツ・イエーガー(Peutz-Jeghers)症候群15.3%,家族性大腸腺腫症9.7%,小腸原発癌9.7%,他臓器からの転移もしくは浸潤癌9.0%であった1)。
□腹痛,腹部膨満感,下痢,便秘,食欲不振,体重減少,貧血などがみられる。典型的な症状がなく,無症状であることもある。進行例では,腸閉塞,黒色便・血便,消化管穿孔がみられることもある。
□小腸腫瘍を疑うきっかけとしては,上記のような症状を精査するために上部消化管内視鏡や大腸内視鏡を行ったが原因となる疾患が同定できなかった場合,もしくはCTを行ったところ小腸に病変を認めた場合が多い。
□CT:小腸の腫瘤や壁肥厚,狭窄などのほか,リンパ節腫張や異常血管の存在など,内視鏡検査や造影検査では得ることのできない消化管外の情報も得ることが可能である2)。小腸腫瘍の描出能向上のためには,動脈相も含めた多時相で撮影するダイナミック CTが有用である。
□消化管造影:腫瘤や狭窄として描出される。内視鏡よりも全体像や隣接臓器との関係の把握はしやすいが,小病変の検出率は内視鏡より劣っている。
□カプセル内視鏡:低侵襲で病変を撮影することができるが,病変を通過するタイミングによっては撮影できない可能性もある。狭窄を伴う病変はカプセル滞留の危険性があることに留意する必要がある2)。
□バルーン内視鏡:病変を洗浄,色素散布を行った上で詳細観察や生検を行うことも可能なため,質的診断を行うことができる。さらに,切除範囲のマーキングを行い低侵襲手術の一助とすることが可能である2)。しかし,病変に到達できない場合には評価することができない。
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