□これらの疾患は消化管にポリープが多発したものを指し,それぞれの疾患で遺伝的背景,ポリープの病理組織所見などが異なる(表)。
□ガードナー症候群(Gardner syndrome)は家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)と同一のAPC(adenomatous polyposis coli)遺伝子変異を背景とした常染色体優性遺伝疾患で,随伴疾患により区別されるが,最近はFAPと同一疾患として扱われることが多い1)。
□ターコット症候群(Turcot syndrome)は,APC遺伝子異常(type2)と,リンチ症候群(Lynch syndrome)の亜型でミスマッチ修復遺伝子異常(type1)にわけられる。ともに脳腫瘍を随伴疾患とし,遺伝形式は劣性遺伝と優性遺伝が混在している。
□ポイツ・イエーガー症候群(Peutz-Jeghers syndrome)はSKT11/LKB1遺伝子変異を有する常染色体優性遺伝疾患で,過誤腫を多発する。
□クロンカイト・カナダ症候群(Cronkhite-Canada syndrome)は非遺伝性の消化管ポリポーシスである。
□消化管ポリープの多発に伴う消化管出血,腹痛,腸重積を呈することがあるが,これらの症状は非特異的であり,また無症状のことも多い。
□それぞれの疾患に特徴的な消化管外症状が前面に出ることがある。ガードナー症候群では骨腫,皮下の軟部腫瘍,デスモイド腫瘍などが,またターコット症候群では脳腫瘍による症状がみられる。
□ポイツ・イエーガー症候群では口唇,口腔粘膜,四肢末端皮膚などへの色素沈着がみられる。
□クロンカイト・カナダ症候群では色素沈着,脱毛,爪甲異常などがみられる。
□消化管ポリープの存在を確認するために,全消化管の検査が必要となる。上・下部消化管内視鏡,ダブルバルーン小腸内視鏡,カプセル内視鏡,バリウム造影などを必要に応じ行う。
□若年者においては,多発ポリープの同定が困難な症例があることに留意する必要がある。
□それぞれの病型により内視鏡所見が異なる。内視鏡検査では組織生検を行い,各疾患に特徴的な病理組織像を確認する。
□消化管外病変の評価も鑑別診断に必要で,CT,MRIなどで,骨,軟部組織も含む全身検索を行い,病変の存在を確認する。
□随伴疾患が高頻度にみられる臓器の専門診療科である泌尿器科,婦人科,眼科,皮膚科の診察を要する。
□詳細な問診により,既往歴,家族歴の聴取を十分に行う。
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