□血流障害が原因となって,腸管に一過性の虚血から広範な腸管壊死をきたす疾患である。
□急性腹症の約1%を占め,重篤な合併症を引き起こすと非常に高い致死率を有する1)。
□発症形式から急性型,慢性型,障害される血管部位から動脈型,静脈型,非閉塞性,また虚血の原因や腸管虚血範囲など様々な形式で分類される。
□急性腸間膜動脈閉塞症,急性腸間膜静脈血栓症,非閉塞性腸梗塞症(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)2),腹部アンギーナ,虚血性腸炎が代表される疾患である。
□腸管壊死をきたす場合,死亡率も高いため,早期に診断し,適切な治療を行うことが重要である。
□腹痛(疝痛発作),悪心・嘔吐,下痢などの腹部症状で発症する。
□突然の症状出現は動脈閉塞症に,徐々に発現する症状は静脈血栓症に特徴的である。NOMIでは特異的な症状に欠けることが多い。腹部アンギーナでは食事摂取後に腹痛を主とする腹部症状がみられる。
□早期には腹部所見が乏しいが,腸管壊死が進行するにつれて,著明な腹部圧痛,筋性防御,筋硬直,腸雑音消失など,汎発性腹膜炎の徴候が現れる。
□腸管壊死が進行すると,WBC,LDH,CPK,アミラーゼ,CRPの上昇,代謝性アシドーシスの進行,乳酸値の上昇を認めるとされるが,非特異的である。
□腸管脂肪酸結合蛋白の上昇が診断に有用との報告があるが,さらなる検討が必要である。
□腹部単純X線:早期には異常所見を呈さないことが多い。
□カラードプラ法:カラードプラ法によるスクリーニングが行われているが,腸管ガスが多いため上腸間膜動脈起始部も含めて評価が困難な場合が多い。また一次分枝の閉塞やNOMIはカラードプラ法では除外できない。
□腹部造影CT:MDCT(multi-detector row computed tomography)による冠状断や矢状断の画像は,腸間膜の血管の走行や性状の評価に有用である。3D-CTの立体構築像が診断に非常に有効である。腸管壁の肥厚や浮腫から虚血腸管の範囲がある程度同定できる。腹腔内遊離ガス像や門脈内ガス像,腸管壁気腫,腸管の拡張と壁の菲薄化,腸管の造影効果の消失は,腸管壊死の所見として重要である。動脈閉塞症や静脈血栓症では,塞栓や血栓による内腔の欠損,血管の拡張や狭小化が認められる。上腸間膜動脈閉塞症では,smaller SMV sign(上腸間膜静脈径<上腸間膜動脈径)がみられる。NOMIでは,末梢血管のスパズム,血管分枝の不整狭窄化,末梢動脈の造影不良所見などがみられる。
□汎発性腹膜炎の徴候があれば,診断的開腹術を行う。開腹時に腸管のviabilityについて超音波ドプラー血流計で評価することもある。
□腹部造影CTで有意な所見が得られなくても,動脈閉塞症,静脈血栓症,NOMIが疑われれば,血管造影を行う。NOMIでは,分岐のびまん性狭小化,攣縮と拡張が交互にみられる(string-of-sausages sign),辺縁動脈などの末梢部の造影不良,腸管壁血管の造影不良など,血管攣縮の特徴を示す3)。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより