□肛門周囲膿瘍(perirectal abscess)のほとんどは,肛門小窩に排泄口がある肛門腺の感染が原因である。
□放置すると自潰し,多くは痔瘻に移行する。
□白血病,直腸癌,コントロール不良な糖尿病,抗癌剤治療中,AIDSをはじめとする免疫不全状態などの基礎疾患がある場合があり注意する。
□全身性疾患やクローン病に合併したものでは難治化する場合がある。
□局所では肛門痛,排便時の疼痛,違和感などの自覚症状があり,肛門周囲皮膚の発赤,腫脹,圧痛,内部の膿汁貯留による波動や硬結を認める。
□放置すると,自潰,排膿する。皮膚側から排膿される場合が多いが,原発口である肛門小窩側から排膿される場合もある。
□全身症状として,発熱,全身倦怠感,悪寒などがある。深部の膿瘍や高齢者では局所症状がわかりにくく,全身症状が前面に出る場合もある。
□視診・触診:局所所見が重要である。通常は左側臥位かシムスの体位とし,肛門周囲が十分に展開できるよう臀部皮膚を左右に広げ,肛門周囲の視診および触診を行う。皮膚の発赤,腫張,熱感,圧痛などの炎症所見や波動,初期や深部の膿瘍では硬結を触知し,全身症状として炎症に伴う発熱や頻脈などを認める。また,直腸肛門指診,肛門鏡検査を患者の疼痛に十分留意しながら行う。ただし,上記所見などから診断が明らかな場合は行わなくてもよい。
□直腸肛門指診:膿瘍は直腸壁外の波動性硬結として触知され,圧痛を認める。高位の膿瘍は直腸膨大部に触知する。圧迫で直腸内の原発口や皮膚側から排膿を認める場合がある。
□肛門鏡検査:直腸粘膜の状態,原発口(肛門小窩の発赤や腫脹など)の位置をみる。
□膿瘍は広がりにより,皮下膿瘍,粘膜下膿瘍,低位筋間膿瘍,高位筋間膿瘍,坐骨直腸窩膿瘍,骨盤直腸窩膿瘍にわけられ,それぞれ治療法が異なる。
□膿瘍が疑われても診断がつかない場合には,超音波,CT,MRIなどの画像診断を併用し,膿瘍の存在と広がりを診断する。経肛門的超音波は患者の疼痛を配慮して行う。膿瘍は,超音波で低エコー域,CTでは低吸収域と周囲の脂肪織濃度の上昇,MRI T2強調画像で高信号に描出される。
□血液検査:白血球増加,核左方移動,CRP陽性などの炎症所見を認める。
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