□痔瘻(anal fistula)とは,直腸,肛門の境界である歯状線上の肛門陰窩(anal crypt)から細菌が入り込んで肛門腺に炎症を起こし,化膿して膿が広がり(肛門周囲膿瘍),ついに肛門周囲の皮膚に口が開いて,膿が出ていつまでも治らない管が残る病気である。
□ほとんどの場合,cryptoglandular infectionが痔瘻の成因である。
□小児痔瘻を除いて自然治癒は稀なため,外科治療の適応である。
□男女比は2.2~5.7:1と男性に多く,30~40歳代に好発する。
□下痢便の時に炎症が起こりやすい。
□肛門周囲膿瘍では突然の痛みを伴う腫脹と発赤や発熱がみられる。
□痔瘻になると持続的あるいは間欠的な膿の排出が主で,痛みは軽度である。
□肛門指診が基本である。
□わが国においては臨床的に便利な隅越分類(図)1)が多く用いられている。括約筋を貫通しない皮下痔瘻(Ⅰ),内外括約筋間を下行する低位筋間痔瘻(ⅡL)と上行する高位筋間痔瘻(ⅡH),外括約筋を越えて坐骨直腸窩に至る坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ),肛門挙筋を越えて骨盤直腸窩に至る骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ)にわけられる。頻度は圧倒的に低位筋間痔瘻(ⅡL)が多い。骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ)はきわめて稀である。
□坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ)の原発巣はCourtney腔と考えられていたが,栗原らは後部深部隙が原発巣であると報告した。また,坐骨直腸窩は坐骨直腸窩中隔によって高位と低位にわけられ,骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ)と診断された多くが,高位坐骨直腸窩痔瘻であることを報告している2)。近年,これらを取り入れた分類も唱えられるようになってきている。
□低位筋間痔瘻(ⅡL)は二次口(膿の出口)を有し,線維化した硬い瘻管を索状に触知することができる。
□粘膜下にごつごつとした硬結を触知する場合は高位筋間痔瘻(ⅡH)である。
□肛門後方(6時)の直腸肛門角を双指診した際,正常でない厚さや硬結を触知する場合には坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ)を疑う。側方に触診を進め,比較的浅いところに瘻管や硬結を触知すれば低位坐骨直腸窩痔瘻である。また,側方深部で肛門挙筋に沿うような板状・腫瘤状の硬結を触知すれば,高位坐骨直腸窩痔瘻である。
□硬い奥行きのある狭窄として触れる場合は骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ)を疑い,MRIで補助診断を行う。
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