□血栓性微小血管症(thrombotic micro-angiopathy:TMA)は,微小血管症性溶血性貧血,消費性血小板減少,微小血管内血小板血栓による臓器機能障害を3主徴とする臨床病理学的症候群であり,その基本的な病態は血管内皮細胞の障害・活性化である。
□TMAは,以下の4つに分類することが提唱されている(図)1)。
①溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)(STEC-HUS):志賀毒素を産生する病原性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli:STEC)感染に起因する。
②血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)(先天性・後天性):ADAMTS13(a disintegrin-like and metallo-proteinase with thrombospondin type1 motifs 13)活性の著明低下(10%未満)に起因する。
③atypical HUS:aHUS(補体関連HUS)*:補体系の遺伝子異常あるいは自己抗体により補体第二経路の過剰な活性化が起こることに起因する。
④二次性TMA*:自己免疫性疾患,悪性腫瘍,薬剤,妊娠,感染,移植などに起因する。
・溶血性貧血(Hb 10g/dL未満):血清LDHの上昇,血清ハプトグロビンの著減,末梢血スメアでの破砕赤血球の存在をもとに微小血管性溶血の有無を確認する
・血小板減少(血小板数15万/μL未満)2)
・急性腎障害(小児例:年齢・性別による血清クレアチニン基準値の1.5倍,成人例:AKIの診断基準)
□中枢神経:意識障害,痙攣,頭痛,出血性梗塞等。
□消化管:下痢,血便,腹痛,重症では腸管穿孔,腸狭窄,直腸脱,腸重積等。
□心臓:心筋障害による心不全。
□膵臓:膵炎。
□播種性血管内凝固症候群。
□便培養検査,便中の志賀毒素直接検出法,抗lipopolysaccharide(LPS)-IgM抗体などが,STEC感染を証明するのに有用である。
□血便を約8割で認め,血液成分が多い重度の血便を伴い,超音波検査では上行結腸壁の著明な肥厚とエコー輝度の上昇が特徴的で,回盲部から肛門部まで肥厚し,重症例では大腸全体に及ぶことも多い。
□臨床的に診断するためには,TTP,STEC-HUS,二次性TMAの除外診断を行うことが重要である。
□補体系の一般的な検査(C3,C4,CH50など)では必ずしも異常値を示さないため,補体制御異常の証拠を明確にするため,遺伝子解析検査と溶血試験などの蛋白解析が必要である。
□全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),抗リン脂質抗体症候群,強皮症などの自己免疫性疾患や,固形臓器移植後の免疫抑制薬投与下に発症するTMAがよく知られている。
□妊娠に関連したTMAは妊娠最終3カ月と周産期に集中し,少数ではあるがADAMTS13活性の著明な低下と阻害性自己抗体および超大型von Willebrand因子(von Willebrand factor:VWF)多量体が存在する症例がある。
・発熱
・動揺性精神神経障害
□止血因子であるVWFの特異的切断酵素であるADAMTS13活性が著明に低下(<10%)し,後天性の場合ADAMTS13に対する自己抗体が検出される。
□ADAMTS13の遺伝子異常による先天性のものはUpshaw-Schulman症候群と呼ばれる。
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