□急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)は,急性に発症し,単相性経過をとる中枢神経系を侵す散在性の脳脊髄炎である。
□発症機序の詳細は不明であるが,脱髄疾患の範疇に入ると考えられている。
□感染やワクチン接種後に発症することが多いが,誘因が明らかでない特発性もある。
□すべての年代に起こりうるが,特に思春期前の小児に好発する1)。
□ADEMは臨床型も含めheterogeneousな疾患であり,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)や視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO),感染性脳炎などとの鑑別がしばしば問題となり,診断が難しいことがある。
□国際的に統一された臨床的診断基準はないが,Inter-national Pediatric MS Study Group(IPMSSG)によって提唱された小児のADEMの診断基準(表)では,発熱で説明のできない脳症症状(意識変容や行動変化)を伴い,それに加えて多巣性の中枢神経系に由来する神経症状を認めることが必須事項となっている。MSでは一般的に脳症を認めない2)。
□2012年のIPMSSGの診断基準では,ADEMを症候群としてとらえることを推奨している。
□多数例での検討では,33~100%の患者に感染症状もしくはワクチン接種の先行が認められ,2~30日の潜伏期間の後に急性に神経症状が出現する3)。
□画像検査:MRIでは,T2強調画像とFLAIR画像で皮質下から深部白質にかけて境界不明瞭な高信号域が多発するのが典型例である。視床,基底核,脳幹,小脳,脊髄に病変を認めることもある1)2)。しかし,病初期のMRIに異常を認めず,回復期で出現する症例もあり,注意を要する。
□髄液検査:髄液所見では,軽度の単核球優位の細胞増多と,軽度の蛋白増加を示すが,正常のこともある。オリゴクローナルIgGバンドは陰性であることが多い3)。
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