□筋クランプ(muscle cramp,calf cramp)は不随意に起こる骨格筋の有痛性筋痙攣であり,一般的には下腿筋で起こりやすい。
□正常人でも高齢者に夜間の筋クランプ(nocturnal leg cramp)が高頻度にみられ,60歳以上では半数以上が経験すると言われる。一方,若年では妊娠時にみられることが知られている。
□筋痙攣の発症機序は末梢神経の遠位部の過剰興奮や脊髄前角細胞の不安定性にあると言われている1)。
□最近の大規模なnocturnal leg crampの研究では,筋痙攣のほか,筋の軽いピクツキ,異常感覚,足の屈曲力低下など末梢の運動・感覚両神経系の過剰興奮と機能低下が関与していることが明らかになっている2)。
□積極的な治療を要するような筋クランプを起こす疾患は非常に多様であり,その原因として代謝性疾患,薬剤性,運動ニューロン病,末梢神経障害,筋疾患などがある。
□脳,脊髄などの中枢性疾患でも,中枢神経の異常興奮や脊髄前角細胞への脱抑制で筋クランプが起こる。
□通常みられる筋クランプは,筋の伸展・屈曲に伴い突然始まり,数分ほど持続した後,徐々に終息するが,しばらく痛みのみが持続することもある。
□正常人でみられるnocturnal leg crampは下腿より末梢に起こることが多く,また過度の運動後にみられることが多い。
□筋クランプの頻度,分布が重要である。頻度が高く,かつ分布が広汎な場合は,代謝性疾患や神経疾患が背景にある可能性があり,血液検査とともに神経学的診察でまず中枢性か,末梢性かを鑑別する。末梢性の場合は二次運動ニューロン障害か筋障害によるものかを鑑別する。
□筋クランプが頻繁に起こるときは,脱水症の有無のほか,低Ca血症,低Mg血症,腎不全,肝硬変,糖尿病,甲状腺機能低下などの代謝異常の有無を検索するとともに,Ca拮抗薬,β遮断薬,HMG-CoA還元酵素阻害薬,利尿薬などによる薬剤性も考慮する。
□神経疾患に伴う場合は,筋力低下・筋萎縮の有無,感覚障害,腱反射の低下などをチェックするとともに,筋線維束性収縮などの不随意運動にも注意する必要がある。筋電図は神経筋疾患の診断に有用であり,筋クランプが広範囲な場合や,持続性かつ重度の場合は検査を行う必要がある。
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