□慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は,小型の成熟B細胞が腫瘍性に増殖し,末梢血,骨髄,リンパ節,脾臓などに浸潤するリンパ系腫瘍である。緩徐な経過を示す症例が多い。
□診断基準では末梢血Bリンパ球を5000/μL以上認めることが必要である。形態や細胞表面形質が同一である。白血化しておらず(末梢血Bリンパ球<5000/μL),リンパ腫の臨床像を呈するものを小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)と呼ぶが,生物学的にも同一疾患であり,まとめてCLL/SLLと呼称する。CD19,CD20,CD23などのB細胞の表面抗原に加えて,CD5が陽性である1)2)。
□わが国では,欧米に比べて頻度が少ない。なお,同じ形態でT細胞の表面形質を示すものはT細胞性前リンパ球性白血病(T-cell prolymphocytic leukemia:T-PLL)であり,CLLとは別の疾患である。
□CLLと同様の成熟B細胞を認めるが5000/μLに満たない場合は,単クローン性Bリンパ球増加増加症(monoclonal B lymphocytosis:MBL)と診断する。
□わが国の発症率は欧米の1/10ほどで,0.3人/10万人である。年齢中央値は60歳代後半である。
□多くの症例は診断時無症状で,検診で診断されることが多い。自覚症状を伴う場合には,全身倦怠感,リンパ節腫脹,腹部膨満感(脾腫による圧迫症状)を認める。病状が進むと,発熱(38℃以上),体重減少(6カ月で10%以上),盗汗(寝具の交換が必要な寝汗)を呈するようになる。また,続発性免疫不全により細菌性感染や日和見感染症を併発することがある。
□初期はリンパ球数の増加のみであるが,病状が進行すると,貧血や血小板減少が出現する。低免疫グロブリン血症を認めることがある一方,M蛋白を呈することがある。
□自己抗体が産生されると自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)や特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)を合併する。AIHAの頻度は10%前後と報告されている。
□AIHAやITPによる血球減少か病状進行による血球減少かを鑑別することは,治療を考える上で重要である。
□Rai分類とBinet分類がある(表)。診察所見と貧血,血小板減少の有無で決定する。治療方針を決定する上で重要な指標となる。
□病期別の生存期間中央値は以前に比べて改善しており,改訂Rai分類低リスクは10年以上,中間リスクは8年,高リスクは6.5年,Binet分類の病期A期は10年以上,B期は8年以上,C期は6.5年である2)。
□予後不良の染色体異常として,11q(ATM)欠失と17p(p53)欠失が挙げられる2)。
□生物学的な因子としては,①免疫グロブリン重鎖(IgVH)遺伝子超可変領域の変異なし,②CD38の発現,③zeta-associated protein of 70kDa(ZAP─70)の発現,を示すものは予後不良である2)。これらの症例には予後不良の染色体異常(11q欠失,17p欠失)を認めることが多い。
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