□IgG4関連疾患とは,血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の浸潤,線維化を病理学的特徴とする,腫瘤性病変を示す慢性疾患である1)。
□涙腺・唾液腺と膵臓を二大好発臓器とするが,それ以外の複数の臓器にも同時性・異時性に病変を呈する全身性疾患であり,ステロイドへの良好な反応性を示す(表)。
□全国調査(2009年)での患者数は約8000人,発症年齢のピークは60歳代で,男性に多かった。
□腫瘤形成性の病変が罹患臓器や周囲組織を物理的に圧迫することで症状を呈しうるが,緩徐に腫大するため無症候性であることが多く,急激な症状の発現は稀である。
□涙腺・唾液腺腫脹は上眼瞼や顎下部の腫大をもたらし,特徴的な容貌変化をきたすことから,IgG4関連疾患発見の契機となりやすい。顎下腺腫大による顎下部腫脹は患者自身が気づくことも多い。また,高度ではないが,涙液・唾液減少による乾燥症状をきたすことから,口渇・ドライアイの原因疾患の1つとして鑑別に挙げるべきである。
□一般的に,膠原病でみられる発熱・全身倦怠感などの全身症状や,皮疹,関節痛などのリウマチ症状は稀である。
□膵,腎,後腹膜などの腹腔内に発生したIgG4関連疾患を理学所見から発見するのは困難である。自己免疫性膵炎では多くは無症候性か,非特異的な倦怠感,食欲不振,背部痛であるが,膵頭部での胆管圧迫や,合併する硬化性胆管炎による閉塞性黄疸が発見のきっかけになる。また,家族歴や体重増加などを伴わない耐糖能異常の出現時にも考慮する必要がある。
□IgG4関連腎臓病は腎以外の臓器に生じたIgG4関連疾患診断に伴い,全身検索中に多発性の造影不良域を特徴とする画像診断で発見されることが多い。最近は,高齢男性の腎障害の原因として,鑑別診断に含めることが勧められる。
□後腹膜線維症は尿管の圧排による水腎症をきたし,腎障害や下肢の浮腫,背部痛などで見つかる。腎門部の腫瘤形成や大動脈壁の肥厚など,画像診断がきっかけになることがある。
□IgG4関連肺病変は無症候例が多いが,咳嗽や喘息様症状を主訴とした場合,非特異的な広義間質病変などの画像診断と併せて考慮される。
□IgG4関連内分泌疾患,特に甲状腺病変は,橋本病をベースに急速に腫大し外科治療を要するタイプ,抗甲状腺抗体陽性で慢性の経過をとる橋本病型のタイプ,甲状腺外病変を合併するタイプ(Riedel甲状腺炎)など,多彩である。
□臨床検査として高ガンマグロブリン血症,特にIgG高値がみられる。血清IgG4高値(135mg/dL以上,健常人は40~80mg/dL)は9割以上で観察され,罹患臓器数の増加とともに高値を示す傾向がある。
□涙腺・唾液腺炎では,単発臓器罹患例でも血清IgG4が高値となっていることが多く,500mg/dL以上も稀ではない。
□罹患臓器数の多い症例,特に腎病変合併例において,低補体血症や免疫複合体上昇を認めることが多い。
□抗核抗体・リウマトイド因子が陽性となる例もあるが,抗体価は一般に低い。抗SS-A抗体などの疾患標識抗体は原則陰性であるが,酵素抗体法で測定した場合,高ガンマグロブリン血症の影響を受け,弱陽性で報告されることがある。
□画像検査では造影CTやMRIにより,罹患臓器のびまん性・限局性の腫大や結節性・肥厚性病変を認める。
□頭頸部では涙腺・唾液腺腫大を認めるが,サルコイドーシスや悪性リンパ腫などとの鑑別は組織的検索を要する。
□近年,三叉神経の分枝,特に眼窩下神経の腫脹が報告された。特に両側性の腫脹はIgG4関連疾患に特有であると指摘された。
□自己免疫性膵炎では "ソーセージ様"の膵のびまん性腫大や,造影CTでの遅延性増強パターンと被膜様構造(capsule-like rim)が特徴である。
□IgG4関連腎疾患では,造影CTでの腎実質の多発性造影不良域が特徴的である。
□IgG4関連病変には高度にFDG(18F-fluorodeoxyglucose)が集積することから,診断時はもちろん,複数病変チェックの全身検索にはFDG-PET検査が有用である。
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