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汗疱・異汗性湿疹

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  • ■治療の考え方

    湿疹の合併の有無を確認し,真菌顕鏡による足白癬の除外診断を行う。

    パッチテスト(本症の悪化する夏場は困難であるが),問診等による原因検索を行う。

    症状に応じて角質軟化剤,ステロイド外用薬を使用,難治例では光線治療導入を考える。

    ■治療上の一般的注意&禁忌

    【注意】

    病因として,前述の金属アレルギーのほか,アトピー素因や掌蹠多汗症,ストレス,喫煙,薬剤アレルギー(アスピリン,経口避妊薬)などの関連性が示唆されており,多種の原因による症候群であることを理解し,原疾患の治療・対策も考慮し診療を行う。

    掌蹠多汗症を伴う場合は手袋装着や靴の着用などについて,なるべく蒸れないようにする,こまめに手足を洗う,拭くなどの指導をする。

    金属アレルギー関与が疑われる場合,金属性補綴物の除去,食生活の指導などを行う。

    ■典型的治療

    【軽度】

    湿疹反応を伴わない軽症例では尿素軟膏やサリチル酸ワセリンの外用のみで十分であることも多い。目立つ水疱は無菌的に破り,乾燥させる。

    一手目:尿素軟膏 1日2回(朝,入浴後,面積に応じて適宜外用)

    二手目:〈処方変更〉サリチル酸ワセリン軟膏10%〔サリチル酸100mg/白色ワセリン900mg(1g中)〕1日1回(入浴後,面積に応じて適宜外用)

    掌蹠多汗症を伴う場合は以下を追加。

    三手目:〈二手目に追加〉院内調製(あるいは市販品)の塩化アルミニウム溶液10~20%,1日1回(入浴後,面積に応じて適宜外用)

    【中等度】

    湿疹病変やかゆみを伴う場合,外用療法を主体とした抗炎症治療が重要である。また,同時に前述の金属アレルギー,掌蹠多汗症ほか,背景因子の治療・対策・指導を並行して行う。

    前記軽症例への対策に加え,以下を処方。

    一手目:アンテベート®軟膏0.05%(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)1日1~2回(面積に応じて適宜外用),タリオン®10mg錠(ベポタスチン)1回1錠 1日2回(内服)併用

    二手目:〈外用の処方変更〉デルモベート®軟膏0.05%(クロベタゾールプロピオン酸エステル)1日1~2回(面積に応じて適宜外用),タリオン®10mg錠(ベポタスチン)1回1錠 1日2回(内服)併用


    【重度】

    ステロイド外用療法主体の治療で皮疹がコントロール不良の場合,紫外線治療を2週間に1回程度を目安に追加施行する。また,急激な悪化,皮疹が重度の場合はステロイド内服を併用することがある。

    中等度治療に追加してナローバンドUVB療法 800mJ/cm2/回を手あるいは足の病変局所に行う。

    中等度治療に追加して一時的にプレドニン®5mg錠(プレドニゾロン)1回2~3錠 1日1回朝内服を1~2週間ほど併用,漸減することがある。

    ■偶発症・合併症への対応

    金属アレルギー関与が疑われる場合,完全除去は困難にしても,陽性頻度の比較的多い金属の含有量が多い納豆やその他胚芽層を含む穀類,およびその加工品(オートミール類),チョコレート,チーズなど1),健康志向あるいは偏食から過量摂取につながりやすい日常食品については留意し,患者の食生活を確認・指導する必要がある。

    歯科金属アレルギー陽性例では,金属性補綴物の除去(セラミック冠への総入れ替えなど)が有用な場合もあるが,一般に高額であり,全例で有効ではないことは事前に患者に告げておくべきである。

    掌蹠多汗症を伴う場合,10~20%塩化アルミニウム溶液外用と同様にイオントフォレーシスも有効で推奨度B-C1で保険治療でもあるが2),機器整備,施術時間の観点から当院外来では試行できていない。また,腋窩多汗症に保険適用を有するボツリヌス局所注射が掌蹠多汗症においても有効であるとの報告もあるが,現在は保険適用ではない。エビデンスレベルは高くないが,精神・心理療法は患者に不安や過緊張傾向がみられる場合,試みる価値はあると思われる。

    本症を契機に全身性に自家感作性皮膚炎を生じた場合,上記ステロイド外用療法に加え,一時的にプレドニン®5mg錠(プレドニゾロン)1回2~3錠 1日1回朝内服を1~2週間ほど併用,漸減することがある。

    ■非典型例への対応

    臨床診断は比較的容易であるが,接触皮膚炎や白癬,掌蹠膿疱症などを鑑別する必要がある。問診で経過を把握し,初診時あるいは治療反応が思わしくない場合は,適宜角層の真菌顕鏡や皮膚生検による確認も考慮する。

    ■高齢者への対応

    特に中高年患者の場合,いわゆる生活習慣病罹患を発端にして,あるいはアトピー性皮膚炎合併患者などにおいては,健康志向の高まりからか,納豆や玄米など穀類の積極的な摂取(あるいはその反動的なチョコレートの過剰摂取)など,やや偏食がみられる場合がある。該当する患者で症状難治の場合,診療を続けながら緩やかに食事内容の是正などを提案していくとよい。

    ■ケアおよび在宅でのポイント

    掌蹠多汗症を伴う場合,手袋装着や靴の着用などについて,なるべく蒸れないようにする,こまめに手足を洗う,あるいは拭くなどの指導をする。金属パッチテストの結果によって食事指導を行うとよい場合もある。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) 高松伸枝, 他:J Environ Dermatol Cutan Allergo. 2008;2(3):160-6.

    2) 田中智子, 他:日皮会誌. 2015;125(7):1379-400.

    【執筆者】 竹内 聡(浜の町病院皮膚科部長)

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