□脊髄空洞症は,髄内に脳脊髄液が貯留し,大きな空洞を形成して脊髄の機能障害を引き起こす疾患である。発生原因として,髄液の循環動態の障害が考えられているが,いまだ不明な点も多い。
□特発性を除くと,原因疾患に続いて空洞が生じる続発的な病態がほとんどである。原因疾患を表に挙げる1)。
□2012年の論文によると,日本人の脊髄空洞症の有病率は1.94人/10万人の割合であった。最も多い原因疾患はキアリ奇形Ⅰ型(48.0%)で,続いて特発性(15.7%)であった2)。
□障害を受けた脊髄の部位によって,様々な症状が出現する。
・運動機能障害:筋力低下,筋萎縮,巧緻運動障害,痙性
・感覚機能障害:疼痛,知覚異常,しびれなどの異常感覚,異痛症
・その他の所見:反射異常,膀胱直腸障害
□脊髄空洞症の診断にはMRIが必須である。T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号の広い領域が脊髄内に認められれば確定診断となる(図)。
□空洞を認めた場合,原因疾患を特定する必要がある。空洞が長く,初回MRIで全体をとらえきれないときは,脊髄全長または他の脊髄高位における追加の画像検査が必要である。
□原因の特定が困難な場合,頭部MRIで水頭症を,頭頸部MRIでキアリ奇形の有無を評価する。また腰仙椎部のMRIで脊髄係留症候群の有無を調べる。
□脊髄腫瘍では,造影剤を用いて腫瘍(特に髄内腫瘍:血管芽細胞腫)の存在を精査する必要がある。
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