□尿管が本来の尿管口(膀胱三角部側角)以外の部位に開口した状態である。一般的には本来の尿管口よりも尾側への異所開口,特に膀胱頸部や尿道,あるいは性路に開口する尿管を意味する。男子に比べて女子に多い(約6倍)。
□尿管異所開口の約70~80%は完全重複腎盂尿管例であり,上半腎所属尿管が異所開口する。
□尿管下端が嚢状に拡張した状態で,膀胱三角部の正常な位置に認められる膀胱内尿管瘤と膀胱頸部を越えて尿道にも及ぶ異所性尿管瘤に大別される。
□膀胱内尿管瘤は男子に多く,成人になって偶然発見されることも少なくない。異所性尿管瘤は女子に多く,約10~15%は両側例である。
□完全重複腎盂尿管例における尿管瘤は,上半腎所属尿管の下端に発生する。
□尿管異所開口の臨床症状には男女差がある。
□女子の尿管異所開口で,腟あるいは腟前庭への異所開口の場合は,尿管性尿失禁をきたす。すなわち排尿訓練が終了した後も少量の持続的な尿失禁が続く。
□女子の膀胱頸部や尿道開口例では,膀胱尿管逆流(VUR)あるいは尿管下端の通過障害からの尿路感染や,水腎水尿管による腹部腫瘤が診断の契機となることがある。
□男子では外尿道括約筋より近位に異所開口するため,女子のように尿失禁をきたすことはない。尿路感染や性路への異所開口例では,精巣上体炎が診断の契機となる。
□尿管瘤は尿路感染が診断の契機となることが多いが,尿道に伸展する尿管瘤や膀胱頸部を閉塞するような尿管瘤は排尿困難をきたすことがある。また,女子では外尿道口から尿管瘤が脱出することもある。
□成人で診断される膀胱内尿管瘤は,瘤内に生じた結石や血尿が診断の契機となる。
□所属腎・尿管の拡張が強い症例では,超音波により尿路の拡張が描出される。膀胱内に存在する尿管瘤が超音波で同定できる確率は70%程度である。
□尿道への尿管異所開口例で尿管下端の拡張が強い場合は,尿管瘤との鑑別が困難な場合がある。
□重複腎盂尿管ではない単一性の尿管異所開口例では,所属腎は形成不全のために腹部超音波にて同定不能なことが多い。
□尿道への尿管異所開口例で逆流を伴う例では,VCUGにて異所開口している尿管が描出される(図1)。
□VCUGにより90%以上の確率で尿管瘤の診断が可能である。
□尿管瘤例では,VCUGの際に膀胱出口部の通過障害の有無のみならず,尿管瘤自体や下半腎所属尿管(姉妹尿管)あるいは対側尿管への逆流の有無を検索することが重要である。
□尿管異所開口例で所属腎の形成不全が高度の場合でも,造影CT(図2)やMRIにて所属腎が同定されることが多い。
□尿管瘤の形態,尿管拡張の程度,所属腎の評価のために有用である。
□所属腎機能の低下がある場合は,DMSA,DTPA,MAG-3などの核種を用いた腎シンチグラムにて分腎機能の低下が認められる。
□重複腎盂尿管に合併する場合は,患側の上半腎のみの機能低下が認められる可能性がある。
□尿道への尿管異所開口の診断には,内視鏡検査による尿管開口部の確認と,尿管カテーテルの挿入による逆行性腎盂造影が重要である。
□腟内視鏡により,腟内への尿管異所開口が確認されることがある。
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