【質問者】野口 満 佐賀大学医学部泌尿器科学講座教授
【「生殖医療ガイドライン」をもとに生殖補助医療が保険適用となった】
日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」(2021年)をもとに,2022年4月より生殖補助医療が保険適用となりました。1993年の世界保健機関の調査によれば,不妊夫婦の原因が男性側に存在するケースは約半数に及びました。また,現代人の精子数が減少傾向であるという報告も散見されることから,近年,男性不妊症に関する注目度が高まっています。
男性不妊症の原因は,①造精機能障害,②精路通過障害,③性機能障害,に大別されます。2015年度の全国調査では①造精機能障害が80%以上を占め,その半数以上が原因不明(特発性),約30%が精索静脈瘤でした。
診断で重要になるのは,精巣の状態や大きさ,精巣上体の硬結や圧痛の有無,精管の有無と精索静脈瘤の存在になります。一般に精巣が萎縮し,柔らかい場合は精液所見が不良のことが多いので,精巣の評価はきわめて重要です。精索静脈瘤は静脈血が内精索静脈,さらに蔓状静脈叢へ逆流するために怒張,うっ血を生じるもので,解剖学的な理由から80~90%が左片側例です。最近では,その診断に超音波検査が頻用されています。そのほか,通常はゴナドトロピンやテストステロンなどの内分泌学的検査と精液検査を行います。精液検査では,精液量,精子濃度,精子運動率などを評価します。
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