女性泌尿生殖器瘻で最も頻度の高いのは膀胱腟瘻で,ついで尿管腟瘻である。通常絶え間ない尿失禁となるため,患者は肉体的,社会的かつ精神的に大きなダメージを受ける。原因は,発展途上国では出産によるものが多いが,先進国においては婦人科手術による医原性のものがほとんどである。このため,医療訴訟問題を抱えている場合も少なくない。瘻孔がきわめて小さなものでは自然閉鎖がありうるが,一般的には手術療法が必要となる。膀胱腟瘻を中心に述べる。
子宮摘出などの骨盤内手術の既往があって,持続性尿失禁を認める場合,まず本疾患を疑うべきである。
膀胱鏡と腟内視診が重要である。子宮摘出後の膀胱腟瘻は,膀胱三角部あるいは後三角部から腟断端に瘻孔を形成していることが多い。この場合はクスコ腟鏡でも瘻孔を同定できるが,膀胱頸部付近の瘻孔ではより腟口に近い前腟壁に開口するため,後腟壁を鉤で圧定し,前腟壁を全体にわたり観察する必要がある。瘻孔が同定しにくいときは,膀胱内にインジゴカルミンなどの色素を注入する。また,腟内に生理食塩水を満たし膀胱内に経尿道バルーンカテーテルを挿入し空気を注入すると,腟内に気泡が出現し瘻孔が同定できる。さらに膀胱鏡と腟内視診を同時に行うと,瘻孔が発見しやすいときもある。いずれにしても,瘻孔の部位とサイズを術前に十分把握しておくことが重要である。
画像診断では膀胱造影,MRIを行う。また膀胱腟瘻に尿管腟瘻を合併していることもあるため,排泄性尿路造影などによる上部尿路のチェックを必要に応じて行う。大きな瘻孔の診断は容易であるが,瘻孔が小さいと症状から膀胱腟瘻が強く疑われても発見しにくいときがある。このような場合は時間をかけ,場合によっては全身麻酔下に注意深く探索する必要がある。
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