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癒着胎盤・子宮内反症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
永松 健 (東京大学医学部産科婦人科学教室講師)
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  • ■疾患メモ

    癒着胎盤および子宮内反症はいずれも臨床上遭遇する頻度は低いが,分娩後に母体の危機的出血を生じることが多い緊急性の高い疾患である。平時より疾患への適切な診断,治療を理解しておくことの重要性は高い。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈癒着胎盤〉

    分娩後に脱落膜を境界として胎盤が剝離して,子宮筋が収縮してらせん動脈の血流が遮断されることで生理的な止血が得られる。一方で子宮内膜(脱落膜)の欠損した部分に胎盤が形成されると,絨毛細胞の子宮筋層への浸潤により胎盤の剝離が困難となる場合があり,これを癒着胎盤という。

    癒着胎盤は帝王切開,子宮筋腫核出術,内膜掻爬術などの既往があり内膜欠損に欠損が生じている場合や,前置胎盤,母体の高年齢などでリスクが高まる。絨毛組織が子宮筋層に侵入している程度により楔入胎盤(子宮筋層表面と癒着),嵌入胎盤(子宮筋層内に侵入),穿通胎盤(子宮筋層を貫通して子宮漿膜面に達する)に分類される。

    児娩出後に胎盤が自然剝離しない,また用手剝離により胎盤を娩出したが剝離面から子宮内腔への持続的出血が生じるといった症状がみられる。穿通胎盤で膀胱筋層までの浸潤が生じていると妊娠中に血尿を生じる場合がある。

    〈子宮内反症〉

    胎盤娩出後に子宮底部が内腔側に折れ返るように陥凹した状態とそれに伴う症状を子宮内反症という()。強い臍帯牽引や,腹壁上から強く底部を押すといった胎盤娩出の手技的な問題に起因する可能性の指摘もあるが,そうした要因と無関係に発症することもあり,原因については未解明の部分が多い。

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    症状として胎盤娩出直後より大量の腟出血,強い下腹部痛を訴えることが多いが,稀に分娩後1日以上経過後に発症することもある。出血および子宮筋や腹膜の刺激により出血性,神経性ショックとなりうる。

    【検査所見】

    〈癒着胎盤〉

    分娩時の所見で初めて確認される場合も多いが,妊婦健診での超音波検査での所見から疑われる場合もある。

    分娩前の癒着胎盤の予測については,超音波検査,MRI検査で,胎盤実質内の無絨毛領域(placental lacunae)の多発,子宮筋層と胎盤実質の境界面の欠如(超音波でのsonolucent zoneの欠如)などが有用とされ,穿通胎盤となっている場合には子宮壁から外方に突出する胎盤実質像や前壁では膀胱への胎盤の浸潤像が確認されることもある。

    分娩後に異常な子宮出血がある際に,子宮内腔面の触診で癒着した絨毛組織を確認して診断に至る場合がある。また,分娩後の超音波カラードプラ法や造影CT検査で癒着部分から内腔面への出血像を確認する方法もある。

    〈子宮内反症〉

    発症時の陥凹突出した子宮底部が腟内,腟外に出ている場合は視診,内診所見で確認できる。子宮内に陥凹がとどまる場合にはエコーや腹壁上からの子宮底部の触診による確認が必要となる。

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