胞状奇胎は,絨毛における栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を特徴とする病変である。わが国では近年増加傾向にあり,絨毛性疾患地域登録では妊娠1000例に対して1.74と報告されている。遺伝学的には,1精子または2精子由来の2倍体からの雄核発生である全胞状奇胎と,多精子受精による3倍体(69,XXX,69,XXY,69,XYY)より発生する部分胞状奇胎に分類される。後者では囊胞化絨毛と正常絨毛が混在する。
経腟超音波では子宮内に胎児を認めず,囊胞状の低エコー域が散在したmultivesicular patternが特徴的である。部分胞状奇胎では,胎児成分を認める場合もある。血清hCG値は異常高値(10万~100万mIU/mL)を示すことが多いが,妊娠初期の症例や部分胞状奇胎ではさほど高値を示さない場合もある。古典的な臨床症状として,重症妊娠悪阻,性器出血,妊娠週数に比して大きな子宮などが挙げられるが,早期に診断されるようになり,これらの所見が診断の契機になることは少ない。
胞状奇胎が疑われる場合,子宮内容除去術を実施し,病理組織学的検査を行う。処置は吸引法で行うことが推奨され,実施後に,子宮内に遺残組織がないか,経腟超音波で十分に確認する。1週間後に遺残が疑われる場合は再搔爬を考慮する。
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