異所性妊娠(ectopic pregnancy)とは,受精卵が本来の着床部位である子宮内腔以外に着床する妊娠であり,頻度は全妊娠の1~2%とされる。着床部位によって卵管妊娠,卵巣妊娠,間質部妊娠,腹腔妊娠,頸管妊娠,帝王切開瘢痕部妊娠に分類され,卵管妊娠が90%以上と最も多い。生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)による単一胚移植の場合の発生率は0.8~2.4%と報告されている。正常妊娠と異所性妊娠が共存する正所異所同時妊娠は,自然妊娠では約1万5000~3万妊娠に1回とごく稀であるが,ARTで複数の受精卵を子宮内に戻す場合には0.15~1%と高率で発生するとされる。
まず,妊娠しているか否かを確認する。妊娠が判明している場合,医療機関への受診歴と正常妊娠が確認されているかを確認する。不妊治療か自然妊娠かで妊娠週数の正確性が異なるため,妊娠方法も確認する。
腟鏡診で出血の有無,内診で子宮・卵巣の大きさ,圧痛の有無,部位をチェックする。妊娠5~6週以降,経腟超音波検査にて子宮内腔に胎囊を確認できない場合は異所性妊娠を疑う。子宮外に胎囊や卵黄囊,胎芽が確認できれば異所性妊娠と診断できるが,妊娠組織がはっきりわからないことも多く,卵巣とは別の付属器腫瘤(多くは不均一な超音波像を呈する)がないか所見を確認する。既に破裂または流産の形で腹腔内に出血している場合には,ダグラス窩に液体貯留を認める。
胎囊が確認できない場合,「自然妊娠の極初期」「異所性妊娠」「流産」「異所性妊娠の流産」を鑑別する。経腟超音波検査で胎囊はhCG値1500〜2000IU/Lを目安に確認できるようになるため,それ以上であっても子宮内腔に胎囊を確認できない場合には,経時的にhCG値の推移を確認し,上昇傾向を認める場合にはCTやMRIを考慮する。また,子宮内容除去術(試験搔爬)にて絨毛組織の有無を確認することも有用である。クラミジア感染症は異所性妊娠の原因のひとつであり,確認しておくことが望ましい。
治療の原則は手術療法である。「治療の実際」に示した条件を満たした場合には保存的手術療法や薬物療法,待機療法も考慮される。いずれの治療内容でも治療後はhCG値の経時的推移を追い,特に薬物療法と待機療法であればhCG値が非妊娠時レベルとなるまで管理する必要がある。
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