監修: | 大石佳能子(株式会社メディヴァ・コンサルティング事業部) |
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著: | 小松大介(株式会社メディヴァ・コンサルティング事業部) |
判型: | B5変型判 |
頁数: | 274頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2023年01月03日 |
ISBN: | 978-4-7849-4379-1 |
版数: | 第3版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
コロナ禍で激変した医療環境を「見える化」
最新の統計データに基づく全面改訂版
◆自院が10年後、20年後も生き残るためにはどうすればよいか? 詳細な市場分析と将来予測に基づく診療所の生き残り戦略を提示しました。
◆健全経営の目安となる数値を明示。各種統計データに加え、独自のマーケティング手法ではじき出した経営指標を、カラーグラフでわかりやすく視覚化しました。
◆著者自ら事務長として経営再建やトラブル解決にあたった事例を紹介。増患対策や人事・労務管理のコツを解説しています。
◆大幅なページ増に加え、無料の電子版が付属。巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます。(B5変型判カラー274ページ・電子版付き)
第1章 数値で読み解く診療所経営
1. 診療所経営の概略
2. 経営・臨床指標の目安
3. 診療所財務の実態
4. 労務にまつわる事実
5. 患者の動向
6. 在宅医療の実態
7. 医療機関の動向
8. 患者動向の変化を見通す
9. 日本の構造変化を甘く見ない
第2章 診療所における経営戦略
1. 診療所の経営戦略とは
2. 経営戦略策定のプロセス
3. 経営戦略とマネジメント
4. ウィズコロナ時代の経営戦略
第3章 事例でみる診療所経営のポイント
1. 本当に効果のある増患対策
2. クリニックにおける競合と連携
3. 人事管理・労務管理の表と裏
4. 組織マネジメント
5. 生産性向上とコスト適正化
6. 在宅医療への取り組み
7. 地域に根ざした事業展開
第1章 数値で読み解く診療所経営
1. 診療所経営の概略
1.1 診療所の外来患者数は40人/日
1.2 個人診療所の年間売上は平均8,501万円、利益は2,528万円
1.3 初・再診料と医学管理料で粗利の4割
2. 経営・臨床指標の目安
2.1 初診率の目安は10%
2.2 診療圏は都心で半径1〜3km、郊外で半径3〜5km
2.3 内科開業に必要な背景人口は2,000人弱
3. 診療所財務の実態
3.1 内科診療所の損益分岐点は年収6,000万円
3.2 リース料率1.8%と金利3.1%は同じ
3.3 借入金は売上高の1.5倍まで
3.4 設備投資は年間平均220万円
4. 労務にまつわる事実
4.1 人件費は売上対比50%以下に
4.2 看護師の人件費は年499万円で上昇中
4.3 毎年14%のスタッフが辞めていく
5. 患者の動向
5.1 外来患者の4分の1は高血圧、1割は糖尿病
5.2 来院頻度は平均3週間に1回
5.3 医師1人当たり外来患者数は今後20年で10%減少
6. 在宅医療の実態
6.1 30万人の看取りができない
6.2 外来40人/日と在宅50人/月は同じ収支
6.3 在宅看取りの約半数は末期癌患者
7. 医療機関の動向
7.1 診療所数トップ5は内科・整形外科・小児科・精神科・消化器内科
7.2 診療所の開業は年8,000件
7.3 診療所は増え続け、病院は減り続けている
8. 患者動向の変化を見通す
8.1 認知症患者が急増し、生産年齢人口の7人に1人に
8.2 死因トップ3は悪性新生物・心疾患・老衰
8.3 65歳以上になると入院患者は7倍に
9. 日本の構造変化を甘く見ない
9.1 もうすぐ人口の30%が高齢者になる
9.2 65歳以上の医療費が全体の60%を占める
9.3 医療費の税負担は国家予算の17%
第2章 診療所における経営戦略
1. 診療所の経営戦略とは
2. 経営戦略策定のプロセス
3. 経営戦略とマネジメント
4. ウィズコロナ時代の経営戦略
第3章 事例でみる診療所経営のポイント
1. 本当に効果のある増患対策
1.1 地域で知られていないことを知る
1.2 初診患者を集めなければ何も始まらない
1.3 継続患者・再診患者こそが宝
1.4 失敗事例から学ぶ集患のポイント
1.5 営業も重要な集患の手段
1.6 予約システムは診療スタイルとの相性で選ぶ
2. クリニックにおける競合と連携
2.1 強い競合には近づかない
2.2 見方を変えれば連携は可能
2.3 ネットワークで総合診療を実現する
3. 人事管理・労務管理の表と裏
3.1 そもそも安定していないスタッフの雇用
3.2 モチベーションを上げるための仕掛け
3.3 退職の際は、思いやりと愛情で
3.4 看護師の一斉退職を止める
3.5 スタッフの声にならない声を聞く
4. 組織マネジメント
4.1 効果的な会議運営のポイント
4.2 活躍する事務長の条件
4.3 親族経営の功罪
5. 生産性向上とコスト適正化
5.1 医療機器の投資判断
5.2 仕入れ価格、委託費のコスト削減
5.3 人件費の適正化
5.4 クリニックにおけるICTの活用とDX
6. 在宅医療への取り組み
6.1 在宅医療を提供する医療機関の類型
6.2 24時間の連携体制をいかにして構築するか
6.3 在宅医療の運営と地域連携
7. 地域に根ざした事業展開
7.1 医師会との適度な距離感をつかむ
7.2 介護事業・住宅事業への展開
7.3 オンライン医療への取り組み
7.4 診療所の新たな経営戦略の事例
本書の初版は2013年に出版されました。4年後の2017年に第2版を、そしてこのたび第3版を上梓しました。お蔭様で初版、第2版ともご好評をいただき、多くの医療関係者に読んでいただきました。約10年間にわたって皆様のお役に立てたこと、大変光栄に、かつ嬉しく思っています。
元々、この本を上梓した最大の理由は、経営環境が厳しくなる中、診療所も「どんぶり勘定の感覚的な経営」から「数字に基づいた科学的な経営」に転換する必要があると痛切に感じたからです。
そこで第1章では、「科学的な経営」を考えるうえで重要となる、診療所経営にまつわる「数字」と、それを「どう解釈するか」をまとめました。最新の統計データに基づいて、数字は大幅にアップデートしています。
昨今、診療所が継続して生き残ることは難しくなっています。少子高齢化と日本経済の伸び悩みを背景に医療財政は益々厳しく、全体のパイが増えない中、医療を必要とする患者数は増えています。医学が進歩し、新たな治療法に配分される医療費は増えても、診療所への配分が大幅に増えることは期待できません。
さらには新型コロナによって患者の受療行動は大きく変わりました。受診控えはいずれ解消しても、マスクや手洗いの定着により感染症患者が減少し、リモートワークの定着によりオフィス近辺での受診が減少するなど、疾病構造や受診の場は変化しました。一方で、病院への入院を避けた結果、在宅医療やオンライン診療は伸びています。
このように診療所を取り巻く環境が大きく変わりつつある中で、「継続して生き残るため」に必要となる基本的な考え方・方針が「経営戦略」です。診療所であるだけ、医師であるだけでは経営的な成功を収めるのが難しくなり、これまではあまり馴染みのなかった経営戦略に正面から取り組む必要が出てきたのです。
そこで第3版では、新たに「経営戦略」に関する章を加えました。「診療所の経営戦略とは」「経営戦略策定のプロセス」「経営戦略とマネジメント」「ウィズコロナ時代の経営戦略」の各項目を第2章に収めています。
また、経営戦略を実践するうえでは様々な障害があり、ノウハウが必要になります。私たちが診療所の運営や再生の支援を行う中で、実際に経験した事例や考察を第3章で紹介しました。
私たちの会社メディヴァは、医療機関の専門的なコンサルティングと運営支援を目指して2000年に設立しました。これまでに開業や運営をお手伝いした診療所は300件を超えます。手前味噌ですが、お手伝いした診療所のほとんどは、経営がとても上手くいっています。開業された先生方の能力によるところは当然大きいのですが、同時に「経営には成功の方程式があり、その方程式に則って経営した」からだと思っています。
経営は「科学」です。「科学」は、つまるところ「数字」とその解釈です。「数字」を認識し、その背景にある考え方を理解し、活用することで、経営の方程式が解けるようになります。
開業すると通常は同じ立地で何十年と診療を続けることになります。何十年後に医療の需給バランスがどうなっているのか? どういう患者さんが増えて、自院はそれに対応できるのか? 等々、将来起こりうるシナリオを想定し、その対策を考えておくことは重要です。
今のような激動の時代に、答えを見つけることは容易ではありませんが、本書が診療所の健全な経営を考えるための一助となることを願っています。
2022年12月 大石佳能子