編: | 生坂政臣(千葉大学医学部附属病院総合診療科教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2020年11月11日 |
ISBN: | 978-4-7849-5602-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆NHK「ドクターG」でおなじみ、Dr.生坂の週刊「日本医事新報」好評連載「キーフレーズで読み解く外来診断学」の単行本化第3弾!
◆Vol.3では72症例を収載し、遭遇頻度順に“common”“ややuncommon”“uncommon”の3段階に分類。uncommon度のレベルを選んで診断に挑戦したり、お好みで巻末の診断名一覧から興味ある症例に目を通す読み方もできます。
◆簡潔に現症・現病歴・最終診断・解説が各CASEごとに2ページにまとめられており、たった5分の隙間時間にも読めると大好評!医学的キーフレーズを手がかりに、uncommon diseaseの診断にどこまで迫れるか?Dr.生坂の診断推論の手法を学びつつ、症例の謎解きにチャレンジ!読めば日常診療がブラッシュアップされること間違いなしの1冊です!
全身の症状
case01 発熱を主訴に受診したが正常鼓膜温を示した16歳女性
case02 亜急性に増悪する不明熱で受診した24歳男性
case03 1カ月前からの咳嗽と発熱を主訴に受診した37歳男性
case04 微熱,喉の違和感,味覚異常,食欲低下,体重減少など多彩な症状で受診した74歳男性
case05 急性の多愁訴で受診した33歳男性
case06 ASTおよびLDH高値を指摘され受診した60歳男性
case07 間欠的な夜間の全身瘙痒を訴える26歳女性
case08 高CRP血症で受診した67歳男性
皮膚の症状
case09 4日前からの発熱と全身の皮疹を認めた40歳男性
case10 発熱,側腹部痛に続いて次々に皮疹が現れる47歳の男性
case11 顔面の腫脹と発熱を主訴に受診した65歳女性
case12 2カ月前からの四肢の皮疹に発熱が加わった72歳女性
神経・精神の症状
case13 微熱,咳嗽,および異常行動を主訴に受診した58歳男性
case14 10日前からの発熱,頭痛,尿閉を主訴に受診した24歳女性
case15 頭痛および右頰部のしびれを主訴に受診した67歳男性
case16 一過性の意識消失を主訴に受診した28歳女性
case17 認知症を主訴に受診した74歳男性
case18 周期的な四肢脱力感を訴える63歳女性
case19 労作時のめまいを主訴に受診した78歳女性
case20 繰り返す意識障害を呈した79歳男性
case21 四肢の感覚異常と欠伸後の発声障害を主訴に受診した54歳男性
case22 10日前からの高次機能低下を訴える74歳男性
case23 発熱後の異常行動を主訴に受診した17歳女性
case24 2カ月間の発熱の末に急性片側難聴とめまいを発症した70歳男性
頭頸部の症状
case25 舌の痛みと味覚障害を主訴に受診した72歳女性
case26 4日前からの歯痛を訴える27歳女性
case27 右眼の痛みを訴える26歳男性
case28 後頸部から両側の肩にかけての痛みと発熱を主訴に受診した74歳女性
case29 感冒後の咽頭痛を主訴に受診した58歳男性
case30 急性発症の左頸部痛と嚥下痛とで受診した58歳女性
case31 頭頸部の充満感と息苦しさを主訴に受診した50歳女性
case32 頭痛,発熱,咽頭痛,歯痛を主訴に受診した67歳女性
case33 心窩部痛と呼吸困難を主訴に受診した43歳男性
case34 慢性の右顔面のしびれを主訴に受診した72歳男性
case35 2カ月前からの嚥下時咽頭痛を訴える42歳男性
case36 しつこい咳嗽で悩む16歳男性
case37 2カ月前からの咽頭違和感,微熱,倦怠感を訴える36歳男性
case38 腫瘍摘出後にCK上昇と顔面腫脹を呈した42歳男性
case39 徐々に増大する頸部腫瘤を主訴に受診した63歳男性
case40 発熱・腹痛・下痢を繰り返し,まぶたの腫れを主訴に受診した29歳女性
case41 2年前から繰り返す鼻出血を主訴に受診した17歳女性
胸・腰背部の症状
case42 2週前から増悪する腰痛を主訴に受診した76歳男性
case43 歩行中の発作性呼吸困難を訴える76歳男性
case44 右背部痛を訴える57歳男性
case45 労作時呼吸困難を主訴に受診した75歳女性
case46 発熱と労作時呼吸困難を訴える37歳女性
case47 咳嗽,息切れを主訴に受診した62歳女性
case48 3週前からの両肩痛と微熱を訴えた73歳男性
case49 4年前からの胸背部痛を主訴に受診した56歳女性
case50 左腰痛と股関節痛を訴える57歳女性
case51 慢性の胸痛を主訴に受診した28歳女性
腹部の症状
case52 10日前からの発熱と脾腫を認めた25歳男性
case53 左側腹部痛と発熱を主訴に受診した26歳女性
case54 間欠性の下腹部痛を主訴に受診した30歳男性
case55 左上腹部痛を主訴に受診した80歳女性
case56 周期的な嘔吐を訴える28歳男性
case57 1カ月前から両側腹部痛を訴える66歳男性
case58 急性の右下腹部痛を主訴に受診した46歳女性
case59 心窩部と背部の痛みで眠れなかったことを主訴に来院した45歳男性
case60 左外陰部の違和感を訴える60歳女性
case61 繰り返す両側鼠径部の有痛性腫脹を訴える18歳女性
四肢の症状
case62 半年前からの左足関節内側の痛みを訴えた35歳主婦
case63 左下腿の痛みとむくみを主訴に受診した48歳女性
case64 急性の右上肢麻痺を訴える86歳女性
case65 3週前からの発熱と右肩,右臀部の痛みを訴える43歳男性
case66 足の付け根の激痛を主訴に受診した79歳女性
case67 四肢の脱力と労作時呼吸困難を主訴に受診した61歳女性
case68 1週前からの両下腿浮腫を訴える71歳男性
case69 2カ月前から間欠性跛行を訴える90歳男性
case70 両下肢浮腫,右側胸水,胆道系酵素上昇を認める78歳男性
case71 周期的な左膝関節の腫脹を訴える42歳女性
case72 緩徐進行性の下腿浮腫と階段の降りづらさを訴える57歳男性
Column1 CASE19症例の胸部X線写真
Column2 CASE19症例の心電図
Column3 丹毒の耳病変
"本書に掲載した症例は,複数のプライマリ・ケア医や専門医を経て私どもの外来に紹介されたcommon diseaseの非典型例か,uncommon diseaseであるが,これらの症例の共有はプライマリ・ケア全体のレベルアップに寄与するとの考えから,このたび前2巻の続編として第3巻を上梓することになった。
本書の主眼はcommon diseaseに合致しない点を見つけてもらうことにあり, 決してuncommon diseaseへの精通を期待しているわけではないが,common,uncommonの定義は, その時代の医療レベルや診療の場によって異なってくる。たとえば,私がプライマリ・ケア領域に足を踏み入れた1990年代前半は,リウマチ性多発筋痛症,良性発作性頭位めまい症などの馴染みの疾患ですら,一般外来で診断されることは稀であった。当時,発熱と右季肋部痛を生じるFitz-Hugh-Curtis syndrome(FHCS)が,若い女性にもかかわらず無石性胆嚢炎と診断されるような診療もしばしば目にした。もちろん胆嚢炎に処方されるセフェムはFHCSの主因菌であるC. trachomatisに無効である。最近はソーシャルネットワークや勉強会,あるいは矢継ぎ早に出版される総合診療系書籍によって疾患周知が進み, これらの“uncommon disease”が見逃されることは激減しつつある。その意味で,本書でややuncommonとラベルした疾患のいくつかは,数年後にcommon diseaseになっている可能性がある。
また,既に米国ではNurse Practitionerがcommon diseaseの診断治療を行っているが,今後Artificial Intelligenceの進化により,現在の感冒がそうであるように,まずは患者自身で診断し,薬局や宅配・通販で薬を調達して治療を試み,解決しない場合に初めてプライマリ・ケア医を受診するような時代が来るかもしれない。そこでのプライマリ・ケア医の仕事はもはやcommon diseaseへの対処ではなく,multi-morbidity(多疾患併存)やbio-psycho-social(生物・心理・社会的)に込み入ったdifficult patientの診療であり,同時に本書で取り上げたような疾患を診る機会も増えるであろう。
本書ではuncommon diseaseの読後想起を容易にするために, 情報を可能な限り割愛した上で疾患スクリプトとメッセージを組み入れた。外来で診断に難渋している患者が実はこれだった,というような偶然に恵まれるようなことがあれば,私どもにとってこれ以上の喜びはない。"