監修: | 湯村和子(国際医療福祉大学病院予防医学センター・腎臓内科教授) |
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編集: | 高橋公太(新潟大学大学院医歯学総合研究科腎泌尿器病態学分野教授) |
編集: | 濱田千江子(順天堂大学医学部腎臓内科学講座准教授) |
判型: | B5判 |
頁数: | 172頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2012年10月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-4295-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
第1章 腎臓の構造・働きと腎機能
腎臓の構造と働き
腎機能の評価
腎機能の低下によって起こる尿毒症(状態)
尿毒症の治療
第2章 CKD(主に保存期腎不全)の患者さんの管理
1.高血圧と腎臓
Q 1 血圧って何?
Q 2 血圧が高いとどうなるの?
Q 3 血圧が高いと腎臓はどうなるの?
Q 4 腎臓が悪いと血圧はどうなるの?
Q 5 慢性腎臓病(CKD)での降圧目標は?
2.腎性貧血
Q 6 腎性貧血って何? どんな症状があるの?
Q 7 腎臓が悪くなるとなぜ貧血(腎性貧血)が起こるの?
Q 8 貧血(腎性貧血)にはどんな治療をするの?
3.腎障害で起こるミネラル・電解質異常
Q 9 高カリウム血症って何?
Q 10 低カルシウム血症って何?
Q 11 高リン血症って何?
4.糖尿病と腎臓
Q 12 糖尿病性腎症って何?
Q 13 糖尿病性腎症では腎臓にどんな異常が起こるの?
Q 14 糖尿病性腎症ではどんな治療をするの?
5.腎不全時の生活上の注意点
Q 15 腎臓が悪くなったときの食事は?
Q 16 食事療法はいつ頃からどういう風に始めるの?
Q 17 食事療法って大変?
Q 18 糖尿病性腎症の食事療法は?
Q 19 運動療法は腎臓にもいいの?
6.高齢者の管理
Q 20 加齢で腎臓が悪くなるの? 腎硬化症ってどんな状態なの?
Q 21 高齢者に多い急速進行性糸球体腎炎ってどんな病気なの?
Q 22 高齢者が心筋梗塞,心不全などを起こした後の日常生活の注意点は?
第3章 血液透析と患者さんの管理
1.血液透析の原理
Q 23 血液透析って何?
2.透析適応基準とその選択
Q 24 どのようになったら透析をしなくてはいけないの?
Q 25 身体障害者手帳取得の手続きは?
Q 26 導入時に起こる不均衡症候群って何?
3.透析ルートの確保─シャントなど
Q 27 内シャントはなぜつくるの? いつつくるの?
Q 28 内シャントの種類と選択は?
Q 29 日常生活で準備することは?
Q 30 シャントはどこに,どんな風につくるの?
Q 31 シャントをつくるのにかかる費用は?
Q 32 シャントトラブルにならないためにはどうするの?
Q 33 シャントトラブルが起きたらどうすればいいの?
Q 34 シャント以外の方法はあるの?
4.透析導入時に知っておきたい基礎知識
Q 35 血液透析のスケジュールはどう決めたらいいの?
Q 36 どんな流れで透析を受けるの? どんな検査をするの?
Q 37 透析クリニックってどんなところ? どんな医療スタッフがいるの?
Q 38 血液透析中はどんなふうに過ごせばいいの?
Q 39 別の施設でも透析を受けられるの?
Q 40 透析施設の選び方は?
5.血液透析での生活上の注意点
Q 41 血液透析導入になったらどんな食事をすればいいの?
Q 42 運動はどれくらいできるの?
Q 43 入浴はできるの?
Q 44 旅行や出張に出かけても大丈夫?
Q 45 透析を始めたら仕事はどうすればいいの?
Q 46 足が不自由で通院ができない場合はどうすればいいの?
Q 47 自宅で透析はできる?
6.透析導入後のケアと予後
Q 48 血液透析中の血圧低下って?
Q 49 血液透析中にみられる腎性貧血って?
Q 50 二次性副甲状腺機能亢進症とは?
Q 51 血液透析療法で問題となる主な合併症って?
Q 52 腎臓以外の病気にかかった場合,どうすればいいの?
Q 53 透析をしていても手術はできるの?
Q 54 透析患者の寿命と主な死因は?
第4章 腹膜透析と患者さんの管理
1.腹膜透析の原理・選択・適応
Q 55 腹膜透析って何?
Q 56 腹膜透析にはどんな種類があるの?
Q 57 腹膜透析はだれでもできるの?
2.腹膜透析の準備・注意点
Q 58 腹膜透析ではどんな準備が必要なの?
Q 59 腹膜透析の機械操作,私にもできますか?
Q 60 バッグ交換って?
Q 61 バッグ交換の場所は?
Q 62 腹膜透析記録ノートって?
Q 63 カテーテルケアって?
Q 64 使用後の透析液バッグはどこに捨てるの?
3.腹膜透析での生活上の注意点─食事・薬・運動・入浴・旅行・通院など
Q 65 腹膜透析している人の食事制限は?
Q 66 日常生活はどうするの?
Q 67 旅行や出張に出かけても大丈夫?
Q 68 腹膜透析導入後の通院やケアはどうすればいいの?
4.腹膜透析特有の合併症,その他
Q 69 カテーテル合併症って?
Q 70 出口部感染,トンネル感染って?
Q 71 腹膜炎って?
Q 72 腹膜硬化症って?
Q 73 血液透析・腹膜透析の医療費はどれくらいかかるの?
Q 74 透析は一生やらなければいけないの?
Q 75 災害時にはどのように対応してもらえるの?
第5章 腎移植と患者さんの管理
1.腎移植の種類と手術方法
Q 76 腎移植の方法は?
Q 77 生体腎移植ドナーとは?
2.臓器移植ネットワーク
Q 78 臓器移植ネットワークへの登録は?
3.腎移植後の生活とその後の治療など
Q 79 腎移植後の生活で気をつけることは?
Q 80 腎移植のあとはなぜ強い薬を飲むの?
付記 小児の腎不全・透析・腎移植の現状と問題点
Topics1 腎機能と腎機能マーカーとして注目されているシスタチンCについて
Topics2 新しい降圧薬の使い方―直接的レニン阻害薬
Topics3 ABO血液型不適合生体腎移植の現況
Topics4 透析導入前に行う腎移植について
Topics5 抗HLA抗体陽性例の腎移植について
Column1 末期腎不全と透析で起こる“下肢つり”への対応
Column2 微量アルブミン尿と顕性蛋白の関係
Column3 よりよい透析療法の評価
Column4 多発性?胞腎患者のケアのポイント
Column5 腹膜透析の種類とそれぞれの違い
Column6 腹膜透析を高齢者に導入するメリット
Column7 日本臓器移植ネットワークと連絡先
当初より,医療の現場に即した本となることを目指して編集しました。医療費などは知っておかなければならないことですが,なかなか調べる暇もないのが実情だろうと思われたため,わかりやすく盛り込むことを考えました。幸いにも好評をいただき,第2版を出版する運びとなったときには,私自身は自治医科大学に移っていましたが,大きな改訂というよりは細やかな点についての見直しを行い刊行となりました。
そして本書『新 腎不全・透析患者指導ガイド』では,研修医や若い腎臓専門医,ジェネラリストの基本的知識として,また患者さんへの具体的な説明の補助として役立てていただくことを考え,構成やQ&Aの項目についても大幅に見直し,最新の情報も取り入れながら,より使いやすい1冊となるよう考慮しました。偶然にも国際医療福祉大学に移ったところで,高橋公太先生,濱田千江子先生の協力を得ることができ,この度こうして出版されることになりました。私は常日頃から,腎不全について,患者さんにどうやってわかりやすく説明し,理解してもらえるかを考えています。なぜなら,患者さん自身が腎不全を理解することが,ご本人やご家族の不安を取り除くことに通じるからです。患者さんの中には,腎臓のことをよく知りたいと積極的に考えておられる方もいます。そのような患者さんの満足度をあげるためにも,診察中に,わからないことはどんなことなのかを確認して,一緒に本書を見ながら理解を深めることは非常に有意義です。たとえば透析導入にあたって,シャントに関する疑問を解消したり,透析施設はどんなところなのかを知れば,安心して診療が受けられるのではないかと考えます。
患者さんの不安感の除去やQOLの向上,また医師の腎不全診療の負担を軽減するために,本書は,患者さんからの質問に答える形で構成されており,病棟・外来診療で,医師がすぐに患者さんへの指導を実践できるようになっています。さらに腎不全・透析患者さんを指導する際に医師が知っておきたい知識も併せて記述しています。本書が少しでも診療のお役に立てば大変嬉しく思います。
本年6月に日本腎臓学会より『CKD診療ガイド2012』が刊行されました。いわゆる慢性腎臓病(CKD)から末期腎不全に至らないためにどうアプローチすべきか,保存期腎不全状態であっても,1年でも2年でも透析までの期間を延長するにはどうすべきかなど,現時点で最良と考えられる診療についてまとめたものです。これらは医療経済上重要なことであると同時に,何より患者さんのQOLに寄与します。よりよい治療を受け,透析を必要としない期間が延長されたら,どんなに素晴らしいことでしょう。それを知らないでいることは悲しいことともいえます。とはいえ,透析は必要のない治療では決してありません。ただ,なるべく導入の時期を遅くするほうが望ましいことは申し上げるまでもありません。血液透析と腹膜透析を併用できる時代でもあります。透析導入となった場合にも,血液透析と腹膜透析を慎重に検討・選択し,患者さんの負担軽減に努めることが肝要です。CKD診療に携わる医師には,透析導入のタイミングや安全な透析導入についての理解をぜひ一層深めていただきたく思います。
また,近年の腎移植の生着率の改善には目を見張るのもがあります。腎移植についても本書を通して理解を深め,ぜひとも適切に推進して欲しいと考えています。