厚生労働省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」(福井次矢座長)は25日、心不全患者に対しても緩和ケアを推進すべきとの認識を盛り込んだワーキンググループの報告書を了承した。心不全を「すべての心疾患に共通した終末的な病態」と位置づけ、緩和ケアの提供体制のあり方を示している。国の検討会で非がんの緩和ケアに関する議論がまとまるのは初めて。
世界保健機関(WHO)によると、循環器疾患は人生の最終段階に緩和ケアを必要とする疾患の第1位にある。一方で、がん以外の緩和ケアについては、患者・家族・医療従事者ともに十分な理解を共有できていない。
こうした現状を踏まえ報告書では、心不全患者の身体的・精神心理的・社会的苦痛を取り除くためには、多職種・地域を横断した連携による全人的なケアが重要だと指摘。身体的苦痛の緩和については、心不全そのものが苦痛の原因となりうるため、疾患の治療と緩和ケアを発症初期から並行して提供することを求めた。心不全患者に対する医療用麻薬や非麻薬性鎮痛薬などによる薬物療法については、投与量などでがん患者との相違点があるため、科学的知見を集積する必要があるとした。
多職種連携については、かかりつけ医や看護師が包括的で継続的な管理・指導において中心的な役割を担うと明記した。基幹病院では寛解後の心不全患者への緩和ケアが提供されるよう、かかりつけ医との連携が重要だと強調。医師・看護師・薬剤師などで構成する「心不全多職種緩和ケアチーム」が、日常管理を行うかかりつけ医などの医療機関をサポートできる体制整備も求めた。