編: | 原田和昌(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター循環器科) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 242頁 |
装丁: | 単色部分カラー |
発行日: | 2024年03月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-7391-0 |
版数: | 初版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆循環器診療ではエビデンスが重要で、それは高齢者に関しても同様です。しかし、多くのRCTには高齢者が含まれていないため、実際のガイドラインがどこまで当てまるのか悩むことはないでしょうか?
◆本書では、そんな「高齢者の循環器診療で遭遇する疑問点」に、循環器診療の第一線の著者たちが応えます!
◆若手時代は本書を通読して高齢者診療の基本を学び、専門医取得後は悩みどころの該当箇所を読み込むことで辞書的にも使えます。幅広いキャリアステージの先生方におすすめできる1冊です。
冠動脈疾患の抗血栓治療
1 DAPT(抗血小板薬)の継続期間
2 PPIを併用すべきか?
3 HBR(高出血リスク)の考え方
4 抗凝固療法と抗血小板治療の併用
ACSガイドライン
5 NSTEMIでculprit 以外を治療すべきか?
6 高齢者では発症何時間までのACSがPCIの適応か?
7 高齢者にもインペラを使うべきか?
慢性虚血ガイドライン
8 安定冠動脈疾患に対する血行再建術に関する考え方
9 EFの悪い慢性IHDは手術かPCIか?
冠動脈疾患の一次予防:脂質異常症
10 LDL-C値はどこまで下げるか?
11 LDL-C値以外の残余リスクの治療
12 高齢者FH(家族性脂質異常症)の治療
冠動脈疾患の一次予防:高血圧
13 ハイリスク高血圧の治療
14 MCI 合併高血圧の治療目標
冠動脈疾患の一次予防:糖尿病
15 循環器疾患合併患者の糖尿病治療戦略
冠動脈疾患の一次予防:CKD
16 高齢者CKDに蛋白制限・減塩はどこまで?
心房細動の抗血栓治療
17 超高齢者で抗血栓治療を中止できるか?
18 AFのPVIは何歳まで行う?
19 抗血栓治療の適応の基準
20 CKDステージ5の患者の抗血栓治療
不整脈の非薬物治療
21 ICD,CRTは何歳まで?
22 AF burdenをApple Watchで評価できるか?
急性心不全の治療
23 心不全と貧血治療
24 心不全におけるCRS(WRF)
25 高齢者急性心不全における非侵襲的呼吸補助の活用方法
慢性心不全の治療(HFrEF,HFpEF)
26 超高齢者の心アミロイドーシスは治療すべきか?
27 心不全と認知症の関係
28 CRSとは(機序)
29 HFpEFの薬物治療
30 超高齢者にSGLT2 阻害薬は安全か
31 HFrEFに対するGDMTは何歳まで?
32 高齢者も心房間シャント術は適応か?
33 Destination Therapyの実際
TAVI
34 TAVIは何歳まで?
35 TAVI 後の薬物治療
SHD
36 MitraClip 後の薬物療法
弁膜症
37 LVEFの良い無症候性重症ARに大動脈弁手術を推奨すべきか?
感染性心内膜炎
38 大きな疣腫では早期手術を行うべきか?
大動脈瘤・解離
39 大動脈解離のリハビリテーション
40 B 型解離に対する胸部ステントグラフト内挿術の適応
PAD
41 難治性PADのインターベンション
42 難治性PADの薬物治療
VTE
43 ひざ下のDVTは治療すべきか?
肺高血圧
44 高齢者PHの治療は?
併存症
45 高齢がん患者に対する腫瘍循環器診療は?
その他
46 ポリファーマシー
47 MCI(軽度認知症)患者が侵襲的治療を希望したら?
48 フレイル・サルコペニアは治療対象か?
わたくしが高齢者の循環器診療を専門に行うようになった2002年当時は,急性心筋梗塞に対する緊急PCI治療の評価すら確立しておらず, 抗血小板薬の投与法も決まっていなかった。さらに,高齢者と若い患者とのあいだで治療適応や抗血小板薬の投与量などを変えるべきかどうかという議論もあったのを記憶している。
循環器診療ではエビデンスが重要である。ある治療法が他の治療法と比較してよいか悪いかが二重盲検無作為化比較試験(RCT)で検証され,ハードエンドポイントを有意に改善する治療が選ばれる。さらにメタ解析が行われ,ガイドラインが作成されるという流れで治療法が決定される。循環器診療では治療法の選択が生死につながることが多いため,これは当然のことと考えられる。
わが国の高齢化率は2000年の17.2%から2023年の29.1%へと急速に上昇し, 超高齢社会に突入した。しかし, 高齢者では循環器疾患が増加するにもかかわらず,RCTに高齢者がほとんど含まれないため,高齢者の循環器診療のガイドラインはほぼ存在せず(ステートメントはある),これまでは若い患者のガイドラインからの流用や推定がほとんどであった。しかし,日々遭遇する患者の大半が高齢者という現在,高齢者の循環器診療に関する治療指針が必要になってきた。
今回,RCTを主導した先生,ガイドラインを作成した先生,循環器と老年医学の両方に造詣の深い教授,高齢者の循環器診療を実際に行っている先生など,循環器診療の第一人者と認められている先生方にお願いし, 高齢者の循環器診療でしばしば遭遇する疑問点について,該当するガイドライン・エビデンスあり,避けるべき治療,高齢者でガイドライン通りにできない場合という,実地診療に即した形で語って頂いた。
高齢者の循環器診療の知識の,現時点での到達点であると自負している。その意味で当該項目を辞書代わりに参照していただいてもよいのであるが, これから循環器内科を専門にしたいという若い先生方には, まず全体を斜め読みすることをお勧めしたい。そうすることで,この本全体に流れている,高齢者を診療する上で身につけなければならない考え方の基本,すなわち,併存症やフレイル,サルコペニア,認知症などがどう高齢者の診療に関係するのかを, ざっと理解することができるからである。そして, それが実臨床に役立ったと思っていただけることが執筆者一同の祈念するところである。
ちなみにフレイル,サルコペニアに関する薬物治療の臨床試験も既に始まっており,これらが将来的に高齢者の循環器診療に影響を与えるかもしれない。
原田和昌
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。