発達障害の中でも成人の就労で最も支援ニーズが高いのは自閉症スペクトラム障害(ASD)である
課題はハードスキルよりもソフトスキルである
従来の職業リハビリテーションサービスでは対応できないため,ASDに特化した就労支援を検討すべきである
実際の企業において実習を行うことで,発達障害者に有効なアセスメントを行うことができ,カウンセリングも実施することができる
就職だけではなく,就職後の長期的フォローアップ支援が大切である
文部科学省が2012年に全国の小中学校1164校(児童生徒数5万2272人)に調査した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」1)によると,読み書き計算等に困難を示す学習障害(learning disabilities:LD)傾向の児童生徒は4.5%,不注意・多動・衝動性のある注意欠如多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)傾向が3.1%,そしてコミュニケーションや対人関係が困難な自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorders:ASD)傾向が1.1%,重複を含め,発達障害の特徴を示す児童生徒が約6.5%,通常の小中学校に存在していることが報告されている。この6.5%という数字は,成人まで含めてわが国の人口に換算すると,約800万人の発達障害者がいることになる。
また,知的レベルを示すIQ(知能指数)の範囲が70~85までのいわゆる知的ボーダーラインとなる範囲には統計学上13.59%が存在することになる。この割合を文科省の6.5%と同様にわが国の人口に換算すると約1721万人となる。わが国のLD児の多くはこの知的ボーダーラインの範囲に入る者も多い。これらは,知的障害を証明する療育手帳を取得することはできないものの,通常の学校での教育についていくには何らかの支援が必要なレベルと考える。一方でアスペルガー症候群等の高機能ASD者の中には偏差値の高い大学等へ進学する者もいる。よって,発達障害と言ってもその特性によって就労上の現状も課題も異なる。
そのような中,2005年(平成17年)4月に施行された発達障害者支援法により,発達障害者に対しても様々な就労支援制度が発足した。以下に発達障害者に特化した就労支援制度を示す。