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在宅療養者の慢性便秘症に対する 仙骨部鍼灸刺激の効果 [学術論文]

No.4792 (2016年02月27日発行) P.43

安部達也 (くにもと病院肛門外科診療部長)

澤登 拓 (株式会社フレアス代表取締役社長)

國本正雄 (くにもと病院院長)

共同著者: 長沼兼一 (株式会社フレアス)

共同著者: 坂 純子 (株式会社フレアス)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 在宅療養者の便秘症状に対する鍼灸治療の効果について検討した。Rome ⅢのC3項の基準を満たす便秘症状に対して訪問鍼灸治療を行った17例(うち女性11例,男性6例,平均76.8歳)を対象とした。左側臥位にてステンレス製ディスポーザブル鍼を左右の第2後仙骨孔に管鍼法で穿刺して,5分間置鍼した。さらに,紙管灸を左右の鍼の直下に,同じく5分間置灸した。これを1週間に2回,4週間で合計8回施行した。治療前と治療終了後にconstipation scoring system(CSS)とpatient assessment of constipation quality of life(PAC-QOL)を測定して比較検討した。4週間の治療後,CSSは平均11.8から9.4に有意に改善した。PAC-QOLも平均39.6から27.8に有意に改善した。これらの効果から,仙骨部の鍼灸刺激が在宅療養者の慢性便秘症状を軽減し,QOLを改善することが示唆された。

    1. 慢性便秘症治療の現状

    人間が健康だと感じる3要素は,快食,快眠,快便と言われており,慢性便秘患者のQOLは,身体的にも精神的にも低下することが報告されている1)。一般成人1万人を対象とした調査では,過去3カ月に便秘症状を経験した人の割合は29.6%と高率であった2)。便秘は若い年代では女性に多いが,加齢に伴い男女ともに増加し,長期療養者や施設入所者では50%以上にも及ぶ1)。欧米でも慢性便秘症の患者は多く,便秘症状による労働生産性の低下や医療費の増加などが社会問題化している。
    便秘はその病態によって治療法が異なるが,日常診療では食事内容や生活全般に対する指導と薬物療法が治療の中心となる。薬物療法で頻用される刺激性下剤は,即効性があり短期的には有用である。しかし,慢性便秘患者が長期連用すると耐性や習慣性が生じたり,電解質異常や脱水を引き起こしたりする危険がある。新規の便秘治療薬も開発されてはいるが,悪心や下痢による服薬中止例が少なくない3) 。このような状況の中,鍼灸や漢方といった東洋医学が安全で安価な補完代替治療として注目されつつある4)
    筆者らは,高齢化に伴って急増する在宅療養者や,障害者などの移動困難者を支援するため,2000年から自宅や施設を訪問してマッサージや鍼灸のサービスを提供している。対象となる主な症状は関節拘縮や筋麻痺,リンパ浮腫などであるが,同時に便秘症状を訴える利用者が少なくない。このような症例に腹部や仙骨部の経穴を刺激することで,便秘症状が改善する場合がある。そこで今回,筆者らが行っている慢性便秘症に対する鍼灸治療の臨床効果について検討した。

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