編著: | 岩切勝彦(日本医科大学大学院医学研究科消化器内科学分野大学院教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 192頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2024年10月01日 |
ISBN: | 978-4-7849-1368-8 |
版数: | 初版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると,本書の全ページを閲覧できます) |
冒頭 食道良性疾患診療フローチャート
1章 診察
外来での診察・問診の要点
2章 検査・診断の進め方
A 内視鏡検査
1 逆流性食道炎,非びらん性逆流症(NERD)
2 好酸球性食道炎
3 食道アカラシアを含む食道運動異常症
B 食道生理機能検査・食道造影検査
1 食道インピーダンス・pHモニタリング
2 高解像度食道内圧検査(HRM)
3 食道造影検査
3章 食道疾患治療薬の知識と上手な使い方
1 プロトンポンプ阻害薬(PPI)
2 カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)
3 漢方,運動機能改善薬,制酸薬,アルロイド
4章 各食道疾患の病態・治療法
A 胃食道逆流症
1 逆流性食道炎の病態
2 非びらん性逆流症(NERD)の病態〔プロトンポンプ阻害薬(PPI)抵抗性NERDの病態も含めて〕
3 胃食道逆流症の鑑別診断〔supragastric belching(SGB),rumination syndrome(RS)も含めて〕
4 逆流性食道炎・非びらん性逆流症(NERD)の薬物治療
5 非薬物治療(内視鏡的逆流防止術―ARMS,ARMA ARM-P)
B Barrett食道
1 Barrett食道の病態,診断,治療
C 好酸球性食道炎
1 好酸球性食道炎の病態
2 好酸球性食道炎の治療(現状および将来の治療)
D 食道アカラシア
1 食道アカラシアの病態
2 食道アカラシアの薬物治療,バルーン拡張術
3 食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(POEM)
4 食道アカラシアの外科的治療
E 食道胃接合部通過障害(EGJOO)
1 食道胃接合部通過障害(EGJOO)の病態と治療
F びまん性食道痙攣(DES),ジャックハンマー食道(JE)
1 びまん性食道痙攣(DES),ジャックハンマー食道(JE)の病態と治療
私が医師になった30数年前には食道良性疾患は稀であり,あったとしても軽症逆流性食道炎を診るくらいであったと思いますが,近年では食道良性疾患を外来で診る機会は明らかに増加しています。その多くは胃食道逆流症(GERD)ですが,主な理由としては,ピロリ陰性者の増加により,高齢になっても胃酸が維持されることが挙げられ,その結果GERD患者が増加してきたと考えられます。
GERDは逆流性食道炎(重症・軽症逆流性食道炎),NERD(true NERD,逆流過敏症,機能性胸やけ)に分類され,現在,日本人の20%前後が有する国民病となっています。GERDの治療には酸抑制薬(PPI,P-CAB)が有効ですが,一部は薬物抵抗性逆流性食道炎であり,薬物抵抗性NERDの患者はかなりの数で存在します。
アカラシアについても,以前は稀な病気と考えられていましたが,POEM治療の普及とともに食道運動機能検査が多くの施設で行われるようになり,初期アカラシアが発見されるようになりました。アカラシアでは早期発見が重要となりますが,特徴的なアカラシアの内視鏡所見が明らかとなってきました。また,びまん性食道痙攣,ジャックハンマー食道などの食道運動異常症を疑う所見も明らかとなっています。さらに,2000年後半から欧米で増加している好酸球性食道炎も本邦で増加し,それらの内視鏡所見も明らかとなってきました。
外来診療において胸やけ,呑酸,つかえ感,胸痛などを主訴とする食道良性疾患は,消化器外来診療で重要な位置づけとなってきています。本書では重要な食道良性疾患を取り上げ,問診のポイント,病態評価に用いられる高解像度食道内圧検査(HRM),食道内インピーダンス・pH検査,代表的なGERD治療薬であるPPI,P-CABについて解説しました。また,各疾患の病態,診断についてもわかりやすく解説し,現状の治療および将来の治療法についても紹介しています。本書が近年増加している食道良性疾患の外来診療のお役に立てれば幸いです。
最後に,原稿をお願いし,お引き受け頂いたすべての先生方,また書籍企画をご提案下さった日本医事新報社に謝意を表します。
2024年8月
日本医科大学大学院医学研究科消化器内科学分野大学院教授
岩切勝彦