編著: | 花田敬士(JA尾道総合病院副院長) |
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編著: | 柘植雅貴(広島大学病院肝疾患センター教授) |
判型: | B5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2024年10月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-0400-6 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆消化器病専門医の試験直前に「さっとおさらいができる」試験対策本です。
◆文章では説明しづらい画像読影問題が多数掲載されているため、画像読影の経験がしっかりと積めます。
◆レアケースは除き、試験用の典型例にのみ絞っております。再度勉強し直したい先生にもおすすめの1冊です。
総論
膵・胆道系疾患
肝疾患
各論1胆道
01 胆囊コレステロールポリープ
02 胆囊癌(Ip型)
03 胆囊癌(Ⅱa型)
04 胆囊腺筋腫症(ADM)
05 膵・胆管合流異常に伴う胆囊過形成
06 膵・胆管合流異常に伴う胆囊癌
07 急性壊死性胆囊炎
08 胆囊内乳頭腫瘍(ICPN)
09 肝外胆管癌(遠位胆管癌)
10 原発性硬化性胆管炎(PSC)
11 IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)
12 肝門部領域胆管癌石
13 総胆管結石(大型結石)
14 胆石+総胆管結石(コレステロール結石)
15 乳頭部腫瘍
16 レンメル症候群
17 急性胆管炎+急性膵炎+総胆管結石
18 先天性胆道拡張症菅
19 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
20 胆管過誤腫
各論2膵臓
21 膵管内乳頭粘液性腫瘍(分枝型)
22 膵管内乳頭粘液性腫瘍(主膵管型)
23 膵癌
24 膵神経内分泌腫瘍(G1〜G3)
25 膵神経内分泌癌(膵NEC)
26 膵粘液性囊胞腫瘍(膵MCN)
27 膵漿液性囊胞腫瘍(膵SCN)
28 膵充実性偽乳頭状腫瘍(膵SPN)
29 副脾+類上皮囊胞
30 腫瘤のない小型膵癌+限局的膵萎縮
31 急性膵炎
32 重症急性膵炎
33 慢性膵炎+膵石
34 膵腺房細胞癌
35 自己免疫性膵炎(IgG4関連症候群)
36 腫瘤形成性膵炎
37 転移性膵癌(腎細胞癌術後の転移)
38 膵管内乳頭粘液性腫瘍由来の癌
39 膵管内乳頭粘液性腫瘍の併存癌
40 早期慢性膵炎
各論3肝
41 肝細胞癌(単発)
42 肝細胞癌(両葉)
43 混合型肝癌
44 転移性肝癌
45 肝内胆管癌(ICC)
46 細胆管細胞癌(CoCC)
47 悪性リンパ腫
48 肝細胞腺腫(HCA)
49 限局性結節性過形成(FNH)
50 肝血管筋脂肪腫
51 肝炎症性偽腫瘍
52 肝血管腫
53 アメーバ性肝膿瘍(経門脈性感染)
54 肝膿瘍(経胆管)
55 肝硬変
56 肝囊胞
57 NAFLD/NASH(MASLD/MASH)
58 鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)
59 自己免疫性肝炎(AIH)
60 肝内結石症
消化器病専門医は,「内科あるいは外科専門医の見識を基本に, さらに消化器領域の疾患と病態を系統的に理解し,高い専門性をもった医療を提供して市民の健康に貢献する」と定義されている。消化器内科は患者として受診する機会が多く,新しい知識を学ぶ姿勢を持ち,院内外のチーム医療,予防医療の遂行などが求められる。
肝臓,胆道,膵臓領域の診断は,病変の肉眼観察が困難で,体外式・内視鏡的超音波検査(US・EUS),CT,MRI,各種の造影法による画像診断,穿刺吸引法や生検などの組織診断を総合して判定を行うことが多い。画像診断のスキル向上には,症例の経験が必要であるが,医師の勤務環境によっては困難な場合も多い。正確な診断には,典型的な画像所見の理解と,病理所見との対比が必須である。
そこで今回,肝疾患診療に造詣の深い広島大学病院肝疾患センターの柘植雅貴教授とともに,肝胆膵領域の画像読影の知識向上をめざしたテキストを企画した。執筆をお願いしたメンバーは,肝胆膵疾患の診療をまさに国内の第一線で展開され,多くの消化器病専門医の育成を既に実践している新進気鋭の先生方である。編者の意向に沿って,美しい画像および病理所見が提示され,消化器病専門医試験合格をめざすポイントも適宜記載されている。消化器病専門医試験の対策には,公表されている過去出題された問題を確認することも必要であるが,今回の提示症例は過去出題された疾患も多く含まれており,試験対策にも大いに役立つ内容と考えている。是非各症例を“経験”頂き,消化器病専門医に必要な画像読影スキルの向上にお役立て頂きたい。同時に,指導医の先生方にもお役に立てる内容となったと自負している。最後に,このような機会を頂いた日本医事新報社の村上由佳氏に心から感謝申し上げる。
2024年9月
花田敬士
近年,B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者に対する抗ウイルス療法の進歩は目覚ましく,HCV持続感染者では8~12週間の抗ウイルス療法により,肝線維化の程度に関係なく,95%以上の症例でHCV完全排除が得られるようになりました。HBV持続感染者に対する抗ウイルス療法も, 肝組織からのウイルス完全排除は困難なものの, 強力なHBV増殖抑制により肝炎の長期的な鎮静化が期待できます。しかし,HCV完全排除やHBV増殖抑制が達成された場合であっても肝細胞癌発症リスクは残存しており,定期的な画像検査の実施は不可欠です。一方,脂肪肝やアルコール摂取,糖尿病を背景とする肝細胞癌の増加は世界的な問題であり,糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患を合併した脂肪肝はMASLD(metabolic dysfunctionassociated steatotic liver disease)と名称変更され,世界的に注目されております。
慢性肝疾患診療において,肝腫瘍の早期発見には定期的な画像検査は必須ですが,超音波検査など単一の画像検査では肝癌の判別が困難な場合も少なくありません。さらに,慢性肝疾患における肝線維化レベルの診断は,病理学的組織検査がゴールドスタンダードであることには変わりないものの,FibroscanやMR elastographyなどの低侵襲な肝硬度測定機器が広く使用されるようになっております。そのため, 肝疾患診療では,超音波検査,CT検査,MRI検査など様々なモダリティの活用が必須であり,画像診断を習得することは消化器病専門医をめざす上で不可欠と言えます。
本書では,各分野でご活躍されている消化器病専門医の先生方にお願いし,日常診療において遭遇する頻度が比較的高いと考えられる肝疾患症例をご提示頂き,画像診断のポイントや鑑別診断,専門医試験における合否の分かれ目について解説を加えて頂きました。これから消化器病専門医試験合格をめざす先生方の試験対策用,既に消化器病専門医を取得された先生方の日常診療における画像診断向上用としてご活用頂けましたら幸いに存じます。
2024年9月
柘植雅貴