近年の高齢化に伴い肺気腫や感染症に続発する気胸が増加している。胸腔ドレナージによる治療にてエアーリークが遷延し,肺膨脹が得られない難治性気胸に至った場合,患者背景から必ずしも外科治療が第一選択とはならない。
現代の気胸に対する手術治療の多くは,胸腔鏡下に肺の気漏部位を修復または部分切除する。低侵襲で行うことができるが,基礎疾患や合併症の程度によっては耐術困難な症例が散見される。
外科治療を回避する場合の内科的治療として,胸膜癒着術が簡易である。胸腔内へ注入する薬剤としては,テトラサイクリン系抗菌薬,抗悪性腫瘍溶連菌製剤(OK-432),タルク,自己血の報告が多い。OK-432やタルクは悪性疾患の場合に保険適用があるため,使用には注意が必要である。また,十分な肺膨脹が得られていない場合での胸膜癒着術は,意図しない部位が胸壁と癒着し,逆に肺膨脹を妨げる原因になる場合があるため,癒着術を行うタイミングは慎重に判断する必要がある。
近年,気漏部位の気管支を固形シリコンで閉塞するendobronchial Watanabe spigot(EWS)充塡術1)という治療方法が普及している。外科治療に耐えがたく,気漏部位が判明している場合に有効である。
難治性気胸の遷延は,有漏性膿胸へ移行する可能性がある。重症感染症への進行は致命的である。高齢者の難治性気胸に対しては,臨機応変に治療手段を選択することが重要である。
【文献】
1) Kaneda H, et al:Respir Investig. 2015;53(1): 30-6.
【解説】
福田章浩 兵庫医科大学呼吸器外科