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甲状腺微小乳頭癌も長期間放置すると未分化転化するのか?

No.4922 (2018年08月25日発行) P.56

一森敏弘 (名古屋第二赤十字病院移植・内分泌外科部長)

宮 章博 (隈病院外科/副院長)

登録日: 2018-08-26

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  • 我々の施設においても甲状腺微小乳頭癌に対しては,リンパ節転移や遠隔転移を疑わせるものがない,気管や反回神経などに浸潤する可能性がない,細胞診で悪性度が高くない,増大しないなどの条件下で,手術より経過観察を勧め,患者の了承を得られれば経過観察する方針としています。ここで質問です。1cmを超えた甲状腺分化癌が,長期の経過(一般的には20年以上)で未分化転化することがありますが,微小乳頭癌が未分化転化をきたす場合はないのでしょうか。もし,未分化転化することがあれば,真の未分化癌の場合は腫瘍倍加時間が著しく短いので,増大に気づいたときには手遅れになることがあると思われます。微小癌をある程度長期経過観察したあとは,手術をしておいたほうが安全であるという考え方はないのでしょうか。隈病院・宮 章博先生にご教示願います。

    【質問者】

    一森敏弘 名古屋第二赤十字病院移植・内分泌外科部長


    【回答】

    【一般成人が微小癌を持っている頻度に比べて,未分化転化する可能性はきわめて低い】

    甲状腺微小癌は病理解剖ではラテント癌として高率に発見され,超音波で発見可能な3mm以上に限定しても3.5~5.2%に発見されるとの報告があります。また,武部らは30歳以上の女性を対象に,乳癌検診時に頸部超音波検査と超音波ガイド下細胞診を用いて甲状腺を検診すると,3.5%に小さい甲状腺癌を認めたと報告しました。この頻度はラテント癌の頻度とほぼ一致しており,1993年当時のわが国における女性の甲状腺癌罹患率10万人当たり3.2人の実に1000倍以上でした。

    当院の伊藤らによる微小癌の非手術経過観察1235例の解析では,経過観察中に遠隔転移を起こした症例や癌死した症例は皆無でした。また,腫瘍サイズの増大や新たなリンパ節転移の出現など疾患進行の兆候が出てから手術を行った症例においても,生命予後に影響を与えるような再発や甲状腺癌による死亡は皆無でした。

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